執念のミイラ

『執念のミイラ』（原題：The Mummy's Ghost）は、1944年にユニバーサル映画が製作・公開したホラー映画です。ミイラ男カリスを主人公とするシリーズの第3作目であり、『ミイラの復活』（1940年）、『ミイラの墓場』（1942年）に続く作品として、翌1944年の『ミイラの呪い』へと繋がります。

前作で炎に包まれ絶命したと思われたカリスは、驚くべきことに生き延びていました。エジプトの邪悪な大神官アンドヘブは、新たな後継者としてユセフ・ベイを任命し、古代エジプトの秘宝であるカリスとアナンカ王女のミイラをアメリカから故郷へと持ち帰らせる計画を実行します。

カリスを蘇らせる方法が記された古代の呪文を解読したのは、象形文字の専門家であるノーマン教授でした。満月の夜、タナの葉9枚を煎じるという儀式を実行した教授でしたが、その直後、カリスによって命を奪われてしまいます。

一方、アナンカ王女のミイラは、スクリップス博物館に展示されていました。ユセフ・ベイはミイラを回収しようとしますが、カリスが王女のミイラに触れた瞬間、アナンカ王女の肉体は土と化してしまいます。それは、アナンカ王女の魂が安息の地を離れると転生するという古代の呪いによるものでした。

アナンカ王女の魂は、エジプト人の血を引くアメリカ人女性アミーナへと憑依していました。ユセフ・ベイはアミーナを誘拐しますが、使命を放棄し、アミーナを独占しようと試みます。しかし、その企みはカリスによって阻止され、ユセフ・ベイは命を落とします。

アミーナの恋人である大学生トムは、警察のウォルグリーン警部と共にカリスを追跡します。しかし、アミーナはカリスの影響により徐々にミイラ化し、最後はカリスに抱かれたまま沼底へと沈んでしまいます。トムの悲痛な叫びが、物語の幕を閉じます。

本作では、ロン・チェイニー・ジュニアが再びカリス役を演じ、シリーズを通してミイラ男の不気味さを際立たせています。他のキャストには、ユセフ・ベイ役のジョン・キャラダイン、トム・ハーヴェイ役のロバート・ロウリー、アミーナ・マンソーリ役のラムゼイ・エイムスなど、個性豊かな俳優たちが名を連ねています。

興味深いのは、アミーナ役のキャスティングです。当初はアクアネッタが起用されましたが、撮影初日に事故で負傷したため、急遽ピンナップガールのラムゼイ・エイムスに交代されました。撮影中の事故やアクシデントは、映画制作の裏側を知る上で貴重なエピソードといえるでしょう。また、カリスが博物館で守衛を殺害するシーンでは、ロン・チェイニー・ジュニアがガラス窓を破り、実際に怪我をするというハプニングもありました。

『執念のミイラ』は、ミイラシリーズの中でも特にスリリングな展開と、撮影秘話に彩られた作品です。ミイラ映画特有の恐怖と、人間ドラマが織りなす物語は、多くの観客を魅了し続けています。

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