堀内元

堀内 元

概要

1964年8月29日に東京都で生まれた堀内元（ほりうち げん）は、国際的に活躍するバレエダンサーおよび振付家です。特に、世界最高峰の一つとされるニューヨーク・シティ・バレエ団（NYCB）でプリンシパルダンサーとして15年間にわたり活躍したことは特筆されます。現在は、アメリカ合衆国ミズーリ州を拠点とするセントルイス・バレエ団の芸術監督を務めており、同団の経営再建と発展に大きく貢献しています。

幼少期とキャリアの始まり

堀内は、著名なバレエ指導者であった堀内完・秀子夫妻の長男として、バレエに囲まれた環境で育ちました。6歳でバレエを始め、10歳になる頃にはプロのダンサーを目指すことを決意。自宅のスタジオで日々研鑽を積みました。彼の姉である堀内かおり、そして双子の弟である堀内充もまた、後にバレエダンサーとして活躍することになります。

1979年4月には、日本の全国舞踊コンクールのバレエ部門で第1位に輝き、その才能を示しました。翌1980年、15歳で出場した権威あるローザンヌ国際バレエコンクールでは、スカラシップ賞と振付賞を同時に受賞。このスカラシップを得て、NYCBの附属校であるアメリカ・バレエ学校へ留学することになりました。父の反対がありながらも、堀内は2年目も留学を継続。その間に、NYCB創設者である偉大な振付家ジョージ・バランシンに認められ、在学中にも関わらず1982年の新作『ペルセフォネ』に出演する機会を得ました。学校卒業後、正式にNYCBに入団します。

ニューヨーク・シティ・バレエ団での活躍

NYCB入団後、堀内は急速に頭角を現します。1983年には、シェイクスピア原作の『真夏の夜の夢』で主役であるオベロンを踊るなど、重要な役に次々と抜擢されました。バランシンから直接指導を受けた期間はわずか2年足らずでしたが、その存在が当時のバレエ団に強い緊張感をもたらしていたと、後に振り返っています。1987年にはピーター・マルテンスの新作『貴族たち』でウルブリヒト役に抜擢されるなど、ダンサーとしての評価を不動のものとし、1989年には24歳という若さでプリンシパルへと昇格しました。彼の卓越した技術と巧みな表現力は、本場ニューヨークでも高く評価され、15年間にわたりNYCBの中心的なダンサーとして活躍しました。

ミュージカルへの挑戦

堀内は、バレエだけに留まらない活動を目指し、活動の幅を広げました。ブロードウェイで『Cats』や『Song and Dance』といった著名なミュージカルに出演。また、英国のウエスト・エンドでも同様の舞台に立つなど、バレエの枠を超えた表現者としての才能も発揮しました。

セントルイス・バレエ団の再建と芸術監督として

NYCBを退団した堀内は、1999年にアメリカ・ミズーリ州にあるセントルイス・バレエ団の芸術監督に就任します。この縁は、NYCB在籍中の1996年に、怪我をした同団のダンサーの代役として客演したことから始まりました。当時のセントルイス・バレエ団は、前ディレクターの死去に加え、巨額の負債を抱え、専属ダンサーはわずか10名、附属バレエ学校の生徒も50名程度と、存続の危機に瀕していました。堀内は、芸術監督として団の立て直しに着手。その改革の手腕により、わずか2年で負債を完済するという驚異的な成果を上げました。また、ダンサーの数を20名程度に増やし、生徒数も350名にまで増加させました。レパートリーも「くるみ割り人形」に限定されていた状態から脱却し、年間3回の定期公演を開催できるまでに育て上げました。さらに、2000年には師であるバランシンに倣い、附属のセントルイス・バレエ学校のオーナー兼校長も兼任し、人材育成と公演活動の両輪でバレエ団を運営しています。

振付家としての活動

堀内は振付家としても多くの作品を生み出しています。これまでに少なくとも20作以上のバレエ小品を創作したほか、古典作品の全幕物の改訂や新たな演出も手掛けています。セントルイス・バレエ団のために創作した堀内版『くるみ割り人形』（2008年）は、時代設定を1904年のミズーリ州とするなど、ユニークな視点で制作された作品として知られています。

また、国際的な大舞台での振付も担当しています。1998年に開催された長野冬季オリンピックの開会式では、フィナーレを飾ったベートーヴェン作曲『歓喜の歌』の振付を手掛け、世界中にその才能を示しました。

その他の活動と受賞

ローザンヌ国際バレエコンクールでは、過去の受賞者としてたびたび審査員を務めるなど、後進の育成にも貢献しています。2015年には、長年の功績が認められ、芸術選奨文部科学大臣賞を受賞しました。

堀内元は、ダンサー、振付家、そしてバレエ団経営者という多角的な顔を持ち、日本のバレエ界における国際的な先駆者の一人として、今なお活動を続けています。

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