堀河紀子

堀河紀子（ほりかわ もとこ）は、天保8年6月1日（1837年7月3日）に生まれ、明治43年5月7日（1910年）に没した、孝明天皇の掌侍（しょうじ）です。彼女は、公卿である堀河康親（ほりかわ やすちか）の娘であり、兄には明治維新で活躍した岩倉具視（いわくら ともみ）がいます。

紀子は嘉永5年（1852年）に孝明天皇の後宮に入り、衛門内侍（えもんのないし）または右衛門掌侍（うえもんのしょうじ）と称されました。後宮に入った紀子は、天皇との間に二人の皇女、寿万宮（じゅまのみや）と理宮（あやのみや）をもうけましたが、いずれも幼くして亡くなっています。しかし、皇女たちの死については偽装説も存在し、真相は明らかになっていません。

紀子の人生において大きな転換期となったのは、和宮（かずのみや）の降嫁問題です。当時、朝廷内では公武合体政策の一環として、孝明天皇の妹である和宮が、江戸幕府の第14代将軍・徳川家茂（とくがわ いえもち）に嫁ぐことが計画されていました。紀子は、兄である岩倉具視や、同じく女官であった今城重子（いまき しげこ）らと共に、この和宮降嫁を積極的に推進しました。

しかし、この和宮降嫁は、朝廷内の尊攘派（そんじょうは）と呼ばれる人々からの強い反発を招きました。尊攘派は、外国勢力の排除と天皇中心の政治体制の確立を目指しており、幕府との関係強化を図る和宮降嫁に反対したのです。紀子は、和宮降嫁を推進したとして、尊攘派から「四奸両嬪（しかんりょうひん）」の一人として激しく弾劾されました。「四奸両嬪」とは、朝廷内で悪事を働いているとされた四人の男性と二人の女性を指す言葉です。弾劾を受けた紀子は、官職を辞して隠居し、さらに出家を余儀なくされました。

慶応4年（1868年）7月、紀子は許されて朝廷に復帰しました。これは、明治維新を経て、新政府が成立したことによるものです。維新後、岩倉具視は新政府の中心人物として活躍し、妹である紀子の名誉回復に尽力したと考えられています。

明治43年（1910年）5月7日、堀河紀子は72歳でその生涯を閉じました。彼女の墓所は、京都市にある真正極楽寺（しんしょうごくらくじ）、通称・革堂（こうどう）にあります。堀河紀子の人生は、孝明天皇の側近として、そして岩倉具視の妹として、幕末の激動の時代を駆け抜けた女性の姿を今に伝えています。

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