堀田頼康

堀田頼康(ほったよりやす、1658年～1724年)は、江戸時代中期の著名な柔術家です。諱は頼保あるいは頼庸とも記され、佐五右衛門、自諾といった通称・号でも知られています。

頼康は、はじめ平野頼建という名で赤穂藩に仕え、200石取りの近習として藩主・浅野長矩に仕えていました。その間、吉村扶寿より起倒流柔術を学びました。赤穂事件では、当初は仇討ちに加わる意思を示していたと伝えられています。しかし、事件後に大石家の資金を持ち逃げし、京都へと逃亡しました。

その後、堀田階康と改名し、後に頼康と改名。京都で道場を開き、独自の柔術流派を創始しました。この流派は「起倒柔術雄雌妙術」と名付けられました。その後、活動拠点を大坂に移し、柔術の指導に当たったようです。

頼康は、赤穂藩に仕えていた頃に大石良雄、萱野重実、間光興らに柔術を教え、大石良雄と萱野重実には免許を与えたと伝えられています。京都での活動後には、滝野遊軒といった弟子も輩出しています。彼の弟子たちは、それぞれ柔術界で活躍したと推測されますが、詳細は史料不足により不明な点が多いです。

享保9年(1724年)、頼康は大坂で67歳で生涯を閉じました。

頼康の生涯は、赤穂藩士としての経歴、事件への関与、そして逃亡後の柔術家としての活躍と、ドラマチックな展開を見せています。彼の創始した「起倒柔術雄雌妙術」は、独自の要素を含んでいたと考えられますが、詳細な技法や系譜については、さらなる研究が必要です。

頼康が残したものは、単なる武術の技法だけではありません。彼の波乱に満ちた人生は、江戸時代の人間模様や社会情勢を反映しており、歴史研究においても重要な存在と言えます。現在、彼の生涯や流派に関する資料は限られていますが、今後、新たな史料の発見や研究によって、より詳細な人物像が明らかになる可能性があります。

参考文献
綿谷雪 『完本 日本武芸小伝』 国書刊行会 2011年
綿谷雪・山田忠史 編 『増補大改訂 武芸流派大事典』 東京コピイ出版部 1978年

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