堤根神社

門真市の二つの堤根神社：歴史と信仰の物語

大阪府門真市には、「堤根神社」と称する神社が2社存在します。どちらも由緒ある神社として知られていますが、その歴史や祭神、そして辿ってきた道のりは大きく異なります。本稿では、それぞれの神社の歴史を紐解き、門真市における神社信仰の一端を紹介します。

1. 宮野町の堤根神社：茨田堤と深く繋がる歴史

門真市宮野町に鎮座する堤根神社は、淀川の支流である古川の南岸、かつての茨田堤の跡地に位置しています。古くは村社として崇敬され、延喜式神名帳には河内国茨田郡五座の一つとして記載されており、門真市で唯一の式内社とされています。

祭神は彦八井耳命と菅原道真です。彦八井耳命は、茨田堤築造に深く関わった茨田氏の祖神として祀られたと伝えられています。このことから、神社創建は茨田堤の築造と密接に関係していることが分かります。平安時代中期に編纂された延喜式神名帳への記載は、この神社の古い歴史と信仰の深さを示しています。

鳥居前には、河内と大和を繋ぐ古道である行基道が通っており、古くから多くの人の信仰を集めてきたことが窺えます。江戸時代初期には、この地の領主であった永井尚政が菅原道真を合祀し、「天満宮」とも称されるようになりました。明治5年には村社に列格しました。

境内には、樹齢500年以上の樟が茂る茨田堤の一部が残されており、昭和48年には「伝茨田堤」として大阪府史跡に指定されました。かつてはより長く堤跡が残っていましたが、宅地開発によって削られてしまったとのことです。

2. 稗島の堤根神社：幾多の変遷を経て

門真市稗島に鎮座する堤根神社は、宮野町の堤根神社とは異なり、創建年代は不明です。しかし、文禄3年（1594年）の検地帳には、「山王宮」として記録されており、稗島と桑才の両村の氏神として祀られていたことが分かります。「山王宮」の名称は大己貴神を祀っていたことに由来すると言われています。

その後、享保10年（1725年）の検地帳では「八剣大明神」と記されており、これは素盞嗚神を祀っていたことを示唆しています。更に、元文3年（1738年）の文書には、天照大神、素盞嗚神、大己貴神を祀ると記されています。祭神は時代と共に変化していることが見て取れます。

明治12年の「北河内郡神社財産登録」では「両村神社」と記載され、祭神は天照大神のみとなっています。明治41年には、式内社である堤根神社の後裔を称して「堤根神社」と改称されました。しかし、式内社であることを裏付ける資料はなく、神社合祀の流行から逃れるための措置だった可能性も示唆されています。同年8月には、郷社である三島神社に合祀されましたが、昭和21年に独立し、旧地に復興されました。

まとめ：異なる歴史を持つ二つの神社

門真市には、歴史的背景や祭神、そして辿ってきた道のりが大きく異なる二つの堤根神社が存在します。宮野町の堤根神社は、古くからの歴史と茨田堤との深い繋がりを持ち、地域の信仰の中心として長く存在してきました。一方、稗島の堤根神社は、幾多の変遷を経て現在の姿となり、その歴史には時代の流れや信仰の変化が反映されています。両神社は、門真市の歴史と信仰を知る上で重要な存在であり、それぞれの神社を訪れることで、異なる歴史と文化に触れることができます。

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