堺本

堺本（さかいぼん）についての詳細

堺本は、日本の古典随筆作品『枕草子』の写本の一系統であり、特に類纂本と呼ばれるカテゴリーに分類されます。この系統は、他の写本系統と異なり、回想章段が欠けており、随想と類想の章段が明確に区分されています。類纂本には、前田本も存在しますが、この前田本は随想・類想章段の後に回想章段が配置されているため、堺本との明確な相違点になります。

歴史的背景

堺本に関する記録では、いずれも室町時代以降の写本であり、奥書には儒学者である清原枝賢が書写したことが記されています。特に注目すべきは、清原氏が堺に住む隠遁の僧・道巴から写本を借り受けたという点で、この経歴から「堺本」という名称が生まれました。現在伝わるこの系統には後世の改竄や加筆が多いとされ、他の写本との注釈書の刊行点数は少ない状況です。

現存する写本とその特徴

堺本にはいくつかの現存する写本が存在し、特に後光厳天皇が書写した宸翰本（後光厳院本、190段）や、95段から成る別系統の写本が含まれます。これらの写本は他の系統と比較した場合、回想章段の扱いに違いがあるため、堺本特有の特徴を持っていると言えます。

さらに、河内学派の素寂が『源氏物語』の注釈書『紫明抄』で「すさまじきもの」という編纂を行った際の本文は、現存するどの堺本写本とも異なる形で残されており、「古堺本」と呼ばれる写本系統の存在を示唆する意見も登場しています。

主な写本の一覧

堺本に関する主な写本には以下のようなものがあります：

• - 後光厳院宸翰本
• - 高野辰之 旧蔵本
• - 台北帝国大学旧蔵本
• - 朽木文庫旧蔵本
• - 群書類従所収本
• - 宮内庁書陵部蔵本
• - 鈴鹿三七 旧蔵本
• - 京都大学図書館所蔵本

これらの写本は、日本の文学史において重要な位置を占めています。

注釈書の発展

堺本を基にした注釈書も存在し、例えば、田中重太郎の『堺本枕草子』（1948年）や、速水博司の『堺本枕草子評釈』（1990年）などがあります。これらの注釈書は、堺本を現代に伝える貴重な資料となっています。

結論

堺本は『枕草子』の写本の中でも独自の立ち位置を持っており、文献学的にも研究の余地が多く残されています。その特徴や歴史的背景を通じて、日本文学の深い理解を助ける貴重な文献であると言えるでしょう。

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