堺水族館

堺水族館：東洋一と謳われた幻の水族館

堺水族館は、かつて大阪府堺市の大浜公園に存在した水族館です。その前身は、1903年（明治36年）に開催された第五回内国勧業博覧会の付属水族館であり、当時としては東洋一とも言われる規模と内容を誇っていました。

博覧会付属水族館時代

誕生の経緯

当初、堺商業会議所は第四回内国勧業博覧会での付属水族館設置を計画していましたが、実現には至りませんでした。しかし、1900年（明治33年）に第五回内国勧業博覧会の開催地が大阪市に決定すると、再び水族館設置に向けた運動を開始しました。

候補地として大阪市中之島公園と堺市大浜公園が挙がりましたが、最終的に「将来的な水族館の存続」と「施設工事費の一部を堺市が負担する」という条件を堺市が受け入れたことで、大浜公園での開催が決定しました。

水族館の建設と開館

水族館の設計は、東京帝国大学理学部の飯島魁博士が担当しました。約720平方メートルの和洋折衷の木造一部2階建ての建物が建設され、1903年2月に完成しました。総工費は14,100円余りで、池の整備費などを加えると66,800円余りに上りました。また、正面には高さ4.5メートルの噴水塔の上に、高さ2.58メートルの龍女像が立つ「乙女の噴水」が設置されました。

1903年3月1日から6月30日まで開催された博覧会では、水族館は80万人以上の来場者を集めました。博覧会閉会後の7月31日、付属水族館は堺市に払い下げられ、翌8月1日に閉館式が行われました。

堺水族館としての再出発

運営の変化

博覧会後、水族館は「堺水族館」と名称を改め、堺市によって運営されることになりました。当初は高い評価を受けましたが、次第に入場者数が減少し、経営は悪化していきました。1905年からは魚槽施設の一部を請負制とするなど、運営方法も模索されましたが、状況は好転しませんでした。

1911年、阪堺電気軌道株式会社が公園内の設備改善を提案し、水族館の運営は同社に委託されました。同社は大浜公園の整備に力を入れ、公会堂や海水浴場の開設など、集客力を高めるための様々な施策を行いました。

施設の詳細

水族館本館は、左右両翼と中央の3区に分かれ、29槽の水槽と放養池が設置されていました。海水槽は1号から13号、15、17から22号までで、淡水槽は14、16、23号以下でした。また、屋外には2か所の淡水平地槽、温室、淡水放養池がありました。海水は、サイフォンの仕組みで井戸に導かれ、ポンプで濾過後、塔槽に汲み上げられ、各水槽に供給される仕組みでした。

各水槽には、多種多様な生物が展示されていました。

• - 海水槽: クラゲ、サンゴ、イソギンチャク、巻貝、二枚貝、ヒトデ、ナマコ、ハゼ、イセエビ、カレイ、ウミタナゴ、マダイ、タコ、ウツボなど
• - 淡水槽: アメマス、ウグイ、フナ、ナマズ、ウナギ、トゲウオ、モロコなど
• - その他: アシカ、オットセイ、金魚、コイ、スッポン、カメなど

展示された魚類は、探集、購入、寄贈の3種類がありましたが、その多くは市内の魚問屋から購入されていました。

水族館の職員

水族館には以下の職員がいました。

• - 顧問：飯島魁（魚類学者、三崎臨海実験所所長）
• - 主幹：西川藤吉（真円真珠養殖の研究者、真円真珠発明者）
• - 嘱託：戸井田盛蔵（福井県立小浜水産高等学校長）

終焉

1934年（昭和9年）の室戸台風の高潮で水族館は大きな被害を受け、さらに1935年には火災によって本館が全焼し、展示生物のほとんどを失ってしまいました。1937年に再建されましたが、臨海工業地帯の造成に伴い集客数は減少し、1961年9月に閉鎖されました。

堺水族館は、その短い歴史の中で、多くの人々に感動と学びを提供しました。現在、その姿を見ることはできませんが、その歴史は、今もなお語り継がれています。

参考資料

堺市立図書館Webサイト内ページ「堺水族館のあゆみ」
堺水族館絵葉書1、2
堺水族館標準画像
第五回内國勧業博覧会附属水族館図
国会図書館第五回内國勧業博覧会
第五回内國勧業博覧会

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