塚崎直義

塚崎直義：弁護士、判事、そして日弁連会長

塚崎直義（つかさき なおよし）は、1881年5月10日に大分県で生まれ、1957年3月26日に75歳で生涯を閉じた法律家です。彼は弁護士として著名な事件を数多く手掛け、その後、大審院判事、最高裁判所判事を歴任し、日本弁護士連合会会長も務めました。

生い立ちと初期のキャリア

塚崎は1903年に旧制山口高等学校を卒業後、京都帝国大学法科大学に進学し、1908年に法学士の学位を取得しました。卒業後、北浜銀行が設立した日本醤油醸造に秘書として入社し、副支配人として尼崎支店に勤務しました。しかし、日本醤油醸造は品質不正の発覚により株価が暴落し、塚崎は1909年に弁護士としての道を歩み始めました。

弁護士としての活躍

1910年2月、中央弁護士会で開業し、同年8月には東京弁護士として登録されました。彼は日本弁護士協会にも所属し、数々の著名な事件で弁護人を務めました。例えば、帝劇女優の月岡静枝の放火容疑事件では無罪を勝ち取り、足尾鉱毒事件争議や甘粕事件などでも弁護人として活躍しました。また、1925年には加藤高明首相暗殺を企てたとして起訴された黒龍会メンバーらの弁護人も務めました。

1930年には東京弁護士会会長に就任しました。1932年の五・一五事件では、海軍側の弁護人を務めました。1935年の新宿パス屋殺し事件では、一審で死刑判決を受けた被告人の弁護を担当し、無罪を立証して死刑判決を覆しました。塚崎の弁護手腕は高く評価され、「この人に頼むと何でも無罪になる」と言われたほどでした。

裁判官としてのキャリア

1947年8月、裁判官任命諮問委員会の諮問を経て、最高裁判所判事に就任しました。三淵忠彦最高裁長官が病気で欠勤した際には、長官代理を務めました。1948年3月12日には、最高裁大法廷の裁判長として、「死刑制度は日本国憲法で禁じられた『残虐な刑罰』には該当しない」とする判決を言い渡しました。同年9月29日には、最高裁判所大法廷の裁判長（長官代理）として、生存権に関する憲法25条2項について、「国家は国民一般に対して概括的に責務を負うものの、個々の国民に対して具体的、現実的な義務を負うものではない」との判決を下しました。

1951年2月、定年退官。

日弁連会長として

1954年には日本弁護士連合会会長に当選しました。彼は過去に2回、東京弁護士会会長を務めていたため、「選挙の好きな人」と揶揄されましたが、これに対し塚崎は「好きで出るのではない。推されてやむなく」と述べていました。

死去とその後

1957年3月26日、幽門閉塞のため75歳で死去しました。墓所は多磨霊園にあります。

発言と著述

塚崎は1933年10月に「五・一五事件を転機として、（日本人は）建国の精神に目覚めつつある」、「満州の問題に関する国民的活躍愛国機献納、国を挙げての愛国活動、それは神州の正義の顕現」と述べています。また、「この人に頼むと何でも無罪になる」と言われたことに対し、「そんなことはない。罪のある者を無罪にはできるはずがない」と語っています。

彼はまた、以下の著書を執筆しています。

『改正商法及理由　判例要旨、定義学説、試験問題、準条適条対照』法文社、1911年
『元女優の保険金詐取放火事件に就て』《保険銀行時報 896号》保険銀行時報社、1918年
* 『弁護三十年』岡倉書房、1935年

塚崎直義は、激動の時代に弁護士、判事として社会に貢献した人物であり、その功績は今日でも高く評価されています。

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