塚本瑞天

塚本 瑞天

塚本 瑞天（つかもと ずいてん）氏は、1955年4月に東京都葛飾区で生まれ、山形県で育った日本の環境官僚です。長年にわたり環境行政の第一線で活躍し、環境省自然環境局長という要職を務めました。公務を退いた後も、環境分野、特に自然保護への貢献を続けています。

経歴

塚本氏は、1978年に信州大学工学部を卒業した後、同大学院農学研究科に進み、1980年に修士課程を修了して農学修士の学位を取得しました。同年、環境行政を担う環境庁に入庁し、そのキャリアをスタートさせます。

初期には、現場での貴重な経験を積みました。国立公園の管理や保全活動の最前線を担うレンジャーとして、大山隠岐国立公園や利尻礼文サロベツ国立公園での勤務を経験しました。これらの地域で日本の豊かな自然と向き合い、その保全の重要性を肌で感じたことは、その後の行政キャリアの基盤となったと考えられます。

また、国際的な視野も持ち合わせており、外務省経済協力局への出向を経て、1993年には在ケニア日本国大使館の一等書記官として赴任しました。ケニアのナイロビに本部を置く国際連合環境計画（UNEP）の担当を務め、地球規模の環境問題に対する日本の関与や貢献において重要な役割を果たしました。この経験は、環境問題が国境を越えた課題であることを深く認識する機会となりました。

帰国後も、環境行政の様々な部署でその手腕を発揮します。2000年には鹿児島県環境保護課長として地方の環境行政に携わり、地域の特性に応じた環境保全施策の推進に貢献しました。その後、2005年には環境省大臣官房広報室長に就任し、環境省の政策や取り組みを広く国民に伝える役割を担いました。

特に自然環境分野での貢献が顕著であり、2009年には環境省自然環境局野生生物課長に着任しました。この時期には、佐渡島のトキが天敵であるテンに襲われて死亡するという痛ましい事件が発生し、その原因究明や再発防止策の検討といった検証作業の責任者として対応にあたりました。日本の象徴的な絶滅危惧種であるトキの保護において、重要な局面での対応を指揮しました。

その後、2011年に環境省自然環境局自然環境計画課長、2012年には環境省九州地方環境事務所長を歴任しました。地方事務所長としては、広大な九州地方における国立公園、野生生物、自然環境全般にわたる国の環境政策の実施を統括しました。

2014年には、環境省における自然環境分野の最高責任者である自然環境局長に就任し、日本の自然保護、生物多様性保全、国立公園行政など、国の根幹をなす自然環境政策全般の推進を指揮しました。この要職を最後に、2015年に環境省を退官しました。

退官後

環境省を退官した後も、塚本氏はその豊富な知識と経験を活かし、様々な立場で環境分野への貢献を続けています。一般財団法人休暇村協会の常務理事として、自然豊かな国立公園内などに展開する休暇村の運営を通じて、自然とのふれあいや環境教育の機会を提供することに携わりました。また、公益財団法人サントリー世界愛鳥基金の運営委員長に就任し、鳥類保護や生態系保全のための活動を支援・推進しています。さらに、一般社団法人ランドスケープコンサルタンツ協会の理事も務め、景観計画や環境配慮設計などの分野においても専門的な視点を提供しています。

塚本氏のキャリアは、国立公園の現場から国際的な舞台、地方行政、そして本省の要職に至るまで、環境行政の幅広い領域を網羅しており、日本の自然環境保全と持続可能な社会の実現に向けた長年の貢献は特筆されます。公務引退後も多様な活動を通じてその専門性を活かし、自然環境保護への情熱を示し続けています。

もう一度検索