塚越古墳 (川崎市)

塚越古墳の概要

塚越古墳（つかごしこふん）は、神奈川県川崎市幸区塚越2丁目に位置する古墳で、古墳時代後期に築造されたとされています。この古墳は円墳とされますが、形状的には前方後円墳の可能性も指摘されています。特筆すべきは、埼玉県鴻巣市にある関東最大の埴輪生産地、生出塚埴輪窯で作られた埴輪が立てられていたことです。

古墳の位置と現状

塚越古墳は、JR南武線の鹿島田駅から東へ650メートル離れた民有地に存在しています。このエリアは多摩川と鶴見川が東京湾に向かって流れる手前の低地帯に形成されており、古墳の現状は直径約15メートル、高さ3.5メートルの円形を成しています。標高は約7.5メートルです。地名の「塚越」はこの古墳が関係していることが江戸時代から指摘されています。『新編武蔵風土記稿』によると、古墳が旦那の名の由来になったと言われています。しかし古墳は長い間公に調査されず、近年になってその実態が解明されたのです。

調査の経緯

2013年に古墳の土地の所有者が川崎市教育委員会と相談したことをきっかけに、調査が始まりました。これにより、塚越古墳の性格を明らかにするために、2013年から2015年にかけて試掘調査が行われました。最初の調査で周溝が確認され、埴輪の破片が多く発見されたことで、古墳であることが初めて確認されました。

2014年の調査では、周溝の続きが発見され、その形状から円墳であった可能性が高まりました。1923年～1927年の地図には楕円形の古墳が描かれており、前方後円墳の可能性も残されています。続く調査では墳頂部から埋葬主体部と思われる構造が見つかり、ここからも古墳の特性が確認されました。

埴輪の発見

最初の調査で見つかった突出した数の埴輪破片のほとんどは円筒形のもので、そこには形象埴輪も含まれていました。これらの埴輪は、生出塚埴輪窯で製作されたとされ、古墳時代後期における重要な証拠となっています。これにより塚越古墳は、その埴輪供給元の観点からも特異な存在として位置づけられています。

歴史的背景

塚越古墳は西暦534年に起こった武蔵国造の乱と関連があります。この時期、橘花屯倉が設置されるなど、地域の政治的状況も変化していました。古墳の築造とこの背景をどう結びつけるかは、今後さらに研究が必要とされる課題です。塚越古墳は、現存する古墳の中で唯一のものであり、その価値は計り知れません。

塚越古墳の研究は、古墳自体の重要性だけでなく、埴輪や歴史的背景の明確化にも寄与するものと期待されています。神奈川県内における貴重な文化遺産として、今後も注目される存在であり続けるでしょう。

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