塩田重利

塩田 重利（しおた しげとし）

日本の歯学者、口腔外科学者。 1926年（大正15年）3月16日、香川県三豊郡観音寺町（現在の観音寺市観音寺町）に生まれ、日本の歯学、特に口腔外科学および顎顔面外科学の分野で顕著な功績を残した。

塩田氏は、東京医科歯科大学名誉教授であり、中医学にも造詣が深いことで知られる。その学術的な深みは、大阪大学医学部、東京医科歯科大学歯学部という異なる分野の最高学府で学んだことに裏打ちされている。

研究者としてのキャリアは、1959年（昭和34年）に「人下顎骨および大腿骨緻密質の曲げ強度に関する研究」で東京医科歯科大学から医学博士号を取得したことに始まる。これは、生体組織の力学的特性を科学的に探求する先駆的な研究であった。

教育者、臨床家としての足跡は幅広い。1963年（昭和38年）に東京大学医学部の助教授として教鞭を執り始め、1965年（昭和40年）には鹿児島大学医学部歯科口腔外科学講座の教授に就任し、地方における口腔外科学の発展に貢献した。この間、さらなる研鑽のため、1972年（昭和47年）には文部省の研究員として一年間、スイスへ留学している。

その後、1977年（昭和52年）には母校である東京医科歯科大学に戻り、歯学部第1口腔外科の教授として、長年にわたり教育と研究の中心的役割を担った。1991年（平成3年）に同大学を退官するまで、多くの歯科医師や研究者を育て上げた。

学術界におけるリーダーシップも発揮した。1985年（昭和60年）には歯科医師国家試験委員長として、歯科医療の質を担保するための重要な役割を担った。また、1986年（昭和61年）には日本口腔科学会理事長に就任し、学術振興と口腔科学の普及に尽力した。

特筆すべき業績の一つに、口腔外科学の代表的な教科書への貢献がある。1999年（平成11年）、恩師である中村平蔵先生（東京医科歯科大学名誉教授）が1971年（昭和46年）に企画・監修した『最新口腔外科学』の全面改訂版の共同編集を担当した。この教科書は、初版以来繰り返し改訂・増刷が重ねられ、世界でも稀に見るロングセラーとなっており、多くの歯科医師や学生にとって不可欠なバイブルとなっている。

塩田氏は、その長年の功績に対し、2006年（平成18年）に瑞宝中綬章を受章し、その貢献が高く評価された。

主な編著書

『口を診る』（南江堂、1984年）
『口腔疾患電顕アトラス』（共編、永末書店、1996年）
『口腔顎顔面外科治療学』（監修、永末書店、1996年）
『最新口腔外科学』（共編、医歯薬出版、1999年）

これらの著作は、日本の口腔外科学、顎顔面外科学の発展に大きく貢献している。

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