塩竈神社 (和歌山市)

塩竈神社の由緒と歴史

和歌山県和歌山市和歌浦に位置する塩竈神社（しおがまじんじゃ）は、地元では「しおかま」の名で親しまれている神社です。鹽竈神社とも表記されます。1917年（大正6年）に玉津島神社（玉津嶋神社）の祓所から独立し、神社となりました。この神社は、海産物と安産の神として信仰され、特に、神体である塩槌翁尊（しおつちおきなのみこと）は、輿の窟（こしのいわや）と呼ばれる岩穴に鎮座しています。

神社の特徴的な景観は、結晶片岩で形成された鏡山の南面に位置し、岩肌が曝れた木理のような模様を呈することから「伽羅岩」と呼ばれています。この岩と松が織りなす風景は、玉津島の原風景を今に伝えています。祠は、海風によって自然に形成された洞窟を利用しており、内部には小さな拝殿が設けられています。

輿の窟と浜降り神事

塩竈神社は、元々玉津島神社の祓所であり、かつては「輿ノ窟（こしのいわや）」と呼ばれていました。この名前の由来は、浜降り神事の際に神輿が奉置される場所であったことにあります。浜降り神事は、毎年9月16日に高野山の地主神である天野丹生都比売神社の神輿が、紀の川沿いを渡り玉津嶋神社に渡御し、翌日には日前宮へと巡行する神事です。神輿は玉津嶋神社で一晩安置され、その場所が興ノ窟でした。

浜降り神事の起源は古代に遡ると考えられていますが、鎌倉時代に一時中断された時期がありました。文保2年（1318年）に再開された記録が残っています。その後、戦国時代に途絶えましたが、近世には天野社の鳥居外から玉津嶋神社を遥拝する神事として継承されています。

塩竈神社の信仰

この窟に対する信仰は、浜降り神事に限定されず、江戸時代後期には「しおかま」の名で信仰の対象となっていました。江戸時代の和歌山では、「一に権現、二に玉津島、三に下り松、四に塩竃よ」と歌われ、塩田で塩を焼く釜からこの名が付いたとされています。また、古くから安産の守り神としても祀られており、現在も多くの人々に親しまれています。

周辺の景観と文化

神社の近くにある小高い丘には、干潟を望むように山部赤人の歌碑が建てられています。かつては家庭円満の守り神として信仰を集めていた樹齢数百年の大木「和合の松」がありましたが、2012年（平成24年）6月に倒壊しました。しかし、和歌の浦のシンボルであった姿を復活させるために、挿し木によるクローン苗が作られ、2018年4月に元の場所に植樹されました。

この一帯は、国指定史跡・名勝の和歌浦の一部であり、塩竈神社の境内地もその中に含まれています。

境内の構造

境内は、以下の構造で構成されています。

本殿：輿の窟（こしのいわや）と呼ばれる洞窟内にあります。
拝殿：参拝者がお祈りをする場所です。

祭礼

例祭：毎年9月16日に行われます。

文化財

国指定史跡・名勝：和歌浦の一部として、塩竃神社境内地が指定されています。

交通アクセス

公共交通機関：南海和歌山市駅またはJR和歌山駅から和歌山バス新和歌浦行きに乗車し、「玉津島神社前」で下車すぐです。

関連項目

鹽竈神社（塩竈神社）
玉津島神社
不老橋

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