塩船観音寺

塩船観音寺

塩船観音寺（しおふねかんのんじ）は、東京都青梅市塩船にある真言宗醍醐派の別格本山です。大悲山を山号とし、関東八十八ヶ所霊場の第七十二番札所、東国花の寺百ヶ寺の東京第十三番札所、奥多摩新四国八十八ヶ所霊場の第五十九番札所としても知られています。その歴史は古く、伝説によれば、7世紀中頃に若狭国の八百比丘尼が紫金の千手観音像を安置したのが始まりとされています。また、寺名の「塩船」は、8世紀に行基がこの地を訪れた際、周囲の地形が船の形に似ていることから、仏が衆生を救う「弘誓の舟」に見立てて名付けられたと伝えられています。

歴史

塩船観音寺は、創建以来、多くの人々に信仰されてきました。9世紀には、安然によって12の坊舎が建てられるなど、寺は大きく発展しました。鎌倉時代には武蔵七党の流れを汲む金子氏、室町時代には青梅・奥多摩方面に勢力を持っていた三田氏の庇護を受け、繁栄を続けました。

室町時代後期に建てられた本堂、阿弥陀堂、仁王門は、当時の建築様式を今に伝える貴重な遺構として、国の重要文化財に指定されています。また、本尊の十一面千手千眼観世音菩薩像（千手観音）や、それを守護する二十八部衆像も、同じく国の重要文化財に指定されており、その芸術性の高さは見る者を魅了します。

文化財

国指定重要文化財

本堂（附:厨子）: 室町時代後期（1467年-1572年）に建立されたもので、桁行五間、梁間五間の寄棟造、茅葺の建物です。内部には厨子が安置されています。
仁王門: 本堂と同じく室町時代後期に建てられた、三間一戸八脚門、切妻造、茅葺の門です。
阿弥陀堂: こちらも室町時代後期の建立で、桁行四間、梁間三間、寄棟造妻入、茅葺形銅板葺の建物です。身舎の周囲に庇が巡らされた独特の形式が特徴です。
木造千手観音立像1軀・木造二十八部衆立像28軀: 千手観音像は快勢作で、像内には「塩船寺本尊、文永元年（1264年）十二月、大仏師法眼快勢等」の銘があります。二十八部衆像は、23軀が鎌倉時代に定快によって、残りの5軀が室町時代に弘円によって制作されました。これらの像は、いずれも仏教美術の傑作として高く評価されています。

東京都指定有形文化財

木造金剛力士（仁王）立像 2躯: 1960年（昭和35年）に指定された仁王像です。

青梅市指定有形文化財

薬師堂: 1968年（昭和43年）に指定されました。
木造薬師如来立像: 薬師堂に安置されている薬師如来像で、1968年（昭和43年）に指定。
木造毘沙門天立像: 本尊脇侍として安置されている毘沙門天像で、1968年（昭和43年）に指定。
木造観音菩薩立像: 阿弥陀如来脇侍として安置されている観音菩薩像で、2005年（平成17年）に指定。
銅鐘: 1968年（昭和43年）に指定された銅鐘です。
青石塔婆（大板碑）: 1964年（昭和39年）に指定された板碑です。
大般若経: 1964年（昭和39年）に指定された経典です。

東京都天然記念物

観音寺の大スギ（夫婦杉、二本）: 1953年（昭和28年）に指定された樹齢数百年の杉の木です。

ツツジ

塩船観音寺は、ツツジの名所としても知られています。毎年春、特に5月には、境内一面に色鮮やかなツツジが咲き誇り、多くの観光客が訪れます。この時期には、ツツジ祭りが開催され、賑わいを見せます。

その他

塩船観音寺は、地元の人々にとって初詣の対象としても親しまれています。

所在地

東京都青梅市塩船194

交通アクセス

JR青梅線東青梅駅から車で15分
JR青梅線河辺駅北口より、都営バスもしくは西東京バス乗車
圏央道「青梅IC」より約10分

参考文献

久野健監修、川尻祐治編『関東古寺の仏像』、芸艸堂、1976、pp.52 - 54
GAKKEN MOOK『東京近郊仏像めぐり』、学研、2009、pp.60 - 61

関連文献

「鹽船村 観音堂」『新編武蔵風土記稿』 巻ノ118多磨郡ノ30、内務省地理局、1884年6月。

関連項目

新東京百景
醍醐寺

外部リンク

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