境直行

境直行：騎手から調教師へ、競馬人生の軌跡

境直行氏（1944年生まれ）は、日本の競馬界において、騎手として、そして調教師として長く活躍した人物です。熊本県で生まれ育ち、幼少期は父の転勤に伴い県内各地を転居しながら過ごしました。

騎手時代：夢への道

小学校卒業間近、兄に連れられて京都へ行き、叔父である京都競馬場の騎手・清田十一氏と出会います。清田氏から騎手を目指さないかという誘いを受け、両親の温かい賛同を得て、京都へ移り住みました。伊藤勝吉厩舎に住み込みながら中学校に通学する傍ら、厩務にも従事。厳しい日々の中、何度も故郷熊本へ逃げ帰ろうと考えましたが、清田氏の励ましを受けて、中学卒業後は馬事公苑の騎手養成課程へ進みます。

当初は高橋直三厩舎の下乗りを予定していましたが、体重制限のため平地騎手試験に合格できず、繋駕競走に力を入れていた大久保石松厩舎で繋駕専門騎手として1年間過ごしました。その後、平地免許を取得し、高橋厩舎へ転属。4年間の下積みを経て、1965年に騎手デビューを果たします。

叔父である清田十一氏、義兄弟である野平祐二氏という名手たちと縁戚関係にあった境氏ですが、16年間の騎手生活で通算160勝という成績に終わりました。自身について「減量とかのせいではなく、腕が悪かった」と振り返っています。1981年、騎手を引退し、調教師への転身を決意します。

調教師時代：新たな挑戦

騎手時代から調教師への転身を意識し始めていた境氏は、5度目の挑戦で1981年に調教師試験に合格します。開業準備中には馬に蹴られて大怪我を負うも、医師の制止を振り切って準備を進めました。そして、2年間の待機期間を経て、1983年3月、栗東トレーニングセンターに厩舎を開業します。

開業初年度から7勝を挙げ、その後も概ね2ケタ台の勝ち星を収めました。1986年にはフレッシュボイスでシンザン記念を制し、開業4年目で重賞初勝利を飾ります。フレッシュボイスは翌1987年には安田記念を制覇し、境厩舎の看板馬として活躍しました。その後は、1993年のウインターステークスを制したローリエアンドレを最後に重賞勝利馬を輩出することはありませんでしたが、オープン馬を送り出すなど、安定した成績を収めました。2015年2月28日、定年により調教師を引退しました。

境厩舎と育成

境厩舎には多くの若手騎手が所属し、中には藤田伸二氏のような著名な騎手も含まれていました。境氏は、騎手としてだけでなく、多くの若手人材育成にも貢献しました。

数々の功績

境氏の調教師としての功績は、重賞勝利だけでなく、関西の優秀調教師賞受賞（1985年）にも表れています。長年にわたる競馬界への貢献は計り知れません。

参考文献

木村幸治『調教師物語』（洋泉社、1997年）
藤田伸二『特別模範男』（宝島社、2006年）
* JRA公式サイトデータファイル「調教師情報 境直行」項目

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