増地庸治郎

増地庸治郎：日本の経営経済学の先駆者

増地庸治郎（ますち ようじろう、1896年1月5日 - 1945年3月10日）は、日本の経営学者です。東京商科大学（現在の一橋大学）と東京帝国大学（現在の東京大学）で教授を歴任し、経営学の研究と教育に尽力しました。彼の学問的業績は、日本の経営学の発展に大きく貢献しています。

生涯

京都府出身の増地は、1919年に東京高等商業学校（現在の一橋大学）を卒業後、住友総本店に入社しました。しかし、2年後には退社し、母校で助手として研究の道に進みます。1923年から1925年まで、ドイツのベルリン商科大学（現在のフンボルト大学ベルリン経済学部）に留学し、経営経済学を深く学びました。当時、東京高商は大学への昇格準備を進めており、多くの教員が海外留学に出ていました。増地もその一人として、本間喜一、渡邉大輔、大塚金之助、金子鷹之助、井藤半彌、吉田良三などの同僚や、神戸高商からの留学生たちと交流を深めました。

帰国後、増地は東京商科大学の助[[教授]]となり、1936年には教授に昇任しました。1937年には「株式会社の本質に関する経営・経済的研究」で商学博士号を取得。1939年から1944年まで、東京帝国大学経済学部の教授も兼任し、両大学で後進の育成に励みました。また、1943年からは東京商科大学附属商業教員養成所主事、東京商科大学附属商学専門部主事も務めました。

1945年3月10日、東京大空襲で防空班長として防火活動中に、娘と共に被災し、49歳で生涯を閉じました。彼の遺体は、ポケットから発見された遺稿とともに、教え子たちによって整理され、翌1946年に『工業経営論』として出版されました。増地の墓は多磨霊園にあります。

学問的業績

増地は、東京高商時代に上田貞次郎に、ベルリン留学中はハインリッヒ・ニックリッシュに師事しました。上田が提唱した「経営学」という用語をあえて用いず、ドイツ風に「経営経済学」という用語を使い、上田の商工経営論をドイツ型の経営経済学へと発展させたことが特徴です。

増地の研究は、株式会社の本質、経営財務、商業経営、生産管理など多岐にわたりました。特に、株式会社の組織構造や株式分散の問題、企業の合理化に関する研究は、当時の社会情勢を反映しており、現代の経営学にも通じる重要な視点を提供しています。

後世への影響

増地の門下からは、古川栄一、山城章、藻利重隆、占部都美、国弘員人、鵜澤昌和、桜井信行など、多くの著名な研究者が輩出されました。また、息子である増地昭男も成蹊大学の名誉教授として、父の遺志を継ぎ研究活動を行っています。増地の遺稿である『工業経営論』は、その後の経営学研究において重要な参考文献となり、彼の学問的遺産は今もなお、多くの研究者や実務家によって受け継がれています。

著作

増地庸治郎は、多くの著作を発表しています。以下に代表的なものを挙げます。

『経営経済学序論』（1926年）
『経営要論』（1929年）
『企業形態論』（1930年）
『商業経営』（1931年）
『商業通論』（1932年）
『経営財務論』（1934年）
『株式会社の本質に関する経営経済的研究』（1937年）
『経営学講話』（1939年）
『賃銀論』（1939年）
『生産力拡充と経営合理化』（1943年）
* 『工業経営論』（1946年）

これらの著作は、経営学の基礎理論から応用まで幅広くカバーしており、当時の経営学の発展に大きく貢献しました。

増地庸治郎は、日本の経営学の黎明期を支えた重要な人物の一人であり、その業績は現代の経営学研究においても大きな意義を持っています。

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