壁の穴ギャング

壁の穴ギャングとは

「壁の穴ギャング」（The Hole-in-the-Wall Gang）は、アメリカ西部開拓時代にワイオミング州のジョンソン郡ホール・イン・ザ・ウォールを拠点として活動していた無法者たちの集団を指します。しかし、これは単一の大規模な組織ではなく、複数の独立したギャングが、それぞれ活動拠点としていた場所の名称から、まとめてそう呼ばれるようになったものです。実際にホール・オブ・ザ・ウォールは、「壁の穴」というよりは、崖沿いの狭い街道でした。

ギャングの構成と活動

各ギャングは互いに連携しつつも、独自の計画に基づき強盗を行っていました。メンバーが他のギャングと一時的に行動を共にすることはありましたが、基本的には各ギャングが独立して活動し、隠れ家で合流する際にのみ交流がありました。隠れ家は、司法当局の追跡を逃れるために理想的な地形に位置しており、防御に優れ、外部からの侵入をほぼ不可能にしていました。また、各ギャングは食料や家畜、馬を自給自足できる経済基盤を持っており、キャンプ内では各々の領域が確立され、他のギャングの物資を盗むことは固く禁じられていました。

隠れ家の詳細

隠れ家には、各ギャングが使用する囲いや厩舎、小屋が複数存在しました。そこでは特定の規則が守られ、他のギャングとの紛争を避ける方法も定められていました。リーダーのような特定の存在はなく、各ギャングが独立した行動規範に従って活動していました。隠れ家はまた、厳しいワイオミングの冬をしのぐための避難場所としても利用され、無法者たちが身を潜めるのに最適な場所でした。

著名なメンバー

壁の穴ギャングには、ブッチ・キャシディ（ロバート・リロイ・パーカー）、サンダンス・キッド（ハリー・アロンゾ・ロンガボー）をはじめ、エルジー・レイ、ベン・キルパトリック、ウィル・カーバー、カミラ・ハンクス、ローラ・ブリオン、ジョージ・カリー、ハーベイ・ローガン、ボブ・ミークス、ロニー・カリー、ボブ・スミス、アル・スミス、ボブ・テイラー、トム・オデイ、サム・キャリー、ブラック・ジャック・ケッチャムなど、多くの無法者がいました。また、ジェシー・ジェイムズも隠れ家を訪れたという説もあります。彼らはワイルド・バンチと呼ばれることもありました。

ギャングの終焉

1899年にユニオンパシフィック鉄道の列車が襲撃された後、ピンカートン探偵社が警備に雇われ、ギャングの追跡が強化されました。しかし、法執行官の潜入捜査も成功せず、ギャングの拠点への強襲も撃退されるなど、50年以上にわたり、彼らを捕らえることはできませんでした。ギャングの活動は、1910年頃にはほぼ終息し、その拠点も歴史の中に消えていきました。ブッチ・キャシディが使用していた小屋は、現在ワイオミング州コーディに移設され、公開されています。

大衆文化での扱い

壁の穴ギャングは、映画や小説など様々な作品で題材とされ、その伝説が語り継がれています。

映画: 「３人の無法者」(1956), 「キャット・バルー」(1965), 「明日に向かって撃て」(1969)などの西部劇で、ギャングの活動やメンバーが描かれています。特に「明日に向かって撃て」は、ブッチ・キャシディとサンダンス・キッドの活躍を描いたことで有名です。また、アニメーション作品やゲームでも、彼らの名前や活動をモチーフにした作品が存在します。
小説: アンナ・ノースの「アウトロウド」(2021)では、歴史を改変した設定の中で、社会から追放された女性たちが壁の穴ギャングと合流し、安全な避難所を求める物語が展開されています。

まとめ

壁の穴ギャングは、アメリカ西部開拓時代を代表する無法者集団として、その名を知られています。彼らの独立性と連携、隠れ家の地理的な利点、そして逃亡を続ける姿は、現代のフィクションにも大きな影響を与え続けています。

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