サンダンス・キッド

サンダンス・キッド：伝説のアウトロー、その生涯

サンダンス・キッド、本名ハリー・アロンゾ・ロングボー（Harry Alonzo Longabaugh, 1867年 - 1908年11月7日）は、アメリカ西部開拓時代後期に名を馳せたアウトロー、強盗です。その名は、1887年に馬泥棒で収監されたワイオミング州サンダンスの刑務所に由来します。ブッチ・キャシディと共に「ワイルドバンチ」を結成し、アメリカ史上最も長く銀行強盗や列車強盗を繰り返した人物として知られています。

生い立ちと初期の経歴

ハリー・ロングボーは、ジョサイア・ロングボーとアニー・G・プレースの間に生まれた5人兄弟の末っ子として、ペンシルベニア州で誕生しました。彼のルーツは、イングランド、ドイツ、ウェールズに遡ります。15歳でいとこと共に西へ向かい、コロラド州で開拓を手伝いながら、牧場で馬の買い付けや繁殖を学びました。その後、モンタナの牧場で働きましたが、厳しい冬の影響で解雇され、ブラックヒルズを経て再び同じ牧場に戻るなど、波乱に満ちた青年期を過ごしました。

ギャングとしての活動

1887年、ロングボーはワイオミング州サンダンスで馬や銃を盗んだ罪で逮捕され、18ヶ月の刑を受けました。この刑務所での収監中に「サンダンス・キッド」と呼ばれるようになり、以後この名を名乗るようになりました。出所後、牧場労働に戻りますが、1891年にはカナダの牧場で働き、その後酒場の経営にも関わるなど、様々な職を転々としました。その後、モンタナに戻り、家畜泥棒を始めます。

1892年頃から列車強盗に関与し、1897年には銀行強盗にも手を染めました。この頃からブッチ・キャシディと出会い、「ワイルドバンチ」の一員として活動するようになります。彼らはワイオミング州の「ホール・イン・ザ・ウォール」を拠点とし、周辺地域を襲撃しました。ピンカートン探偵社による執拗な追跡を受けながらも、彼らは大胆な犯行を繰り返しました。強盗の際には脅迫と交渉を使い、なるべく暴力を避けることで知られていましたが、実際には、ギャングの構成員によって殺害された法執行官も複数存在しています。

逃亡と最期

1901年、追っ手を逃れるため、ロングボーはブッチ・キャシディと共にアメリカを離れ、アルゼンチンへと向かいました。その後ボリビアに移動し、そこで銀鉱山の配達員を襲撃した際、地元住民に通報され、ボリビア軍に包囲されます。1908年11月6日、サン・ヴィセンテで、彼らはボリビア軍との激しい銃撃戦の末に命を落としました。地元警察の捜査によると、一人が致命傷を負った相方を楽にするために撃ち、その直後に自ら命を絶ったとされています。しかし、遺骨のDNA鑑定では身元が確定せず、二人が生き延びたという説も存在します。

死後の伝説と大衆文化

サンダンス・キッドの死後、彼の生涯は数々の映画、文学作品、音楽の題材となり、伝説的なアウトローとして語り継がれています。特に映画『明日に向って撃て！』では、ロバート・レッドフォードがサンダンス・キッドを演じ、彼の名声は不動のものとなりました。また、この映画にちなんで名付けられたサンダンス映画祭は、映画業界において重要な存在となっています。サンダンス・キッドは、単なるアウトローとしてだけでなく、アメリカ西部のロマンと冒険の象徴として、今もなお多くの人々に愛されています。

補足

サンダンス・キッドは、銃の扱いに長けていたとされますが、ボリビアでの銃撃戦以前には、人を殺した記録は確認されていません。また、彼の別名として、フランク・スミスやハリー・A・プレースなどの名前が使われていたことも知られています。彼の物語は、実像と虚像が入り混じり、多くの人々を魅了し続けています。

主な登場作品

映画『シャイアン』（1947年）
映画『ブラックストーンの決闘』（1948年）
映画『ザ・テキサス・レンジャーズ』（1951年）
B級映画『ザ・スリー・アウトローズ』（1956年）
映画『烙印なき男』（1956年）
映画『明日に向って撃て！』（1969年）
テレビ映画『ミセス・サンダンス』（1974年）
映画『新・明日に向って撃て！』（1979年）
映画『誘拐犯』（2000年）
テレビ映画『ブッチ&サンダンス/伝説のアウトロー』（2004年）
映画『ブッチ・キャシディ -最後のガンマン-』（2011年）

音楽

ケント「Sundance Kid」
サム・ロバーツ「Sundance」
アークティック・モンキーズ「Black Treacle」

その他

ザ・シンプソンズ『Treehouse of Horror XIII』
漫画/アニメ『ドリフターズ』
ゲーム『Call of Juarez: Gunslinger』
小説『サンダンス』（2014年）

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