夏の夜 (ベルリオーズ)

『夏の夜』（仏: Les nuits d'été）は、エクトル・ベルリオーズが作曲した、全6曲から構成される歌曲集です。テノールまたはメゾソプラノ向けに書かれましたが、実際にはメゾソプラノやコントラルトが単独で歌うことが多くなっています。この作品は、ベルリオーズの4つの歌曲集の中でも特に重要な作品とされており、女性作曲家ルイーズ・ベルタンに献呈されました。

概要

ベルリオーズの歌曲作品は、消失したものや草稿、断片を除くと18曲が現存しています。『夏の夜』は、友人であるロマン派詩人テオフィル・ゴーティエの詩集『死の喜劇』に収められた6つの詩に基づいています。当初は1840年頃にピアノ伴奏の歌曲として作曲され、1841年に出版されました。当時、妻ハリエットと不和だったベルリオーズは、1842年から歌手マリー・レシオと演奏旅行を同行するようになり、後に再婚しました。ベルリオーズはマリーのために、1843年に第4曲をオーケストラ伴奏に編曲しました。その後、第2曲を1855年から1856年に、残りの4曲を1856年3月にオーケストラ用に編曲しています。現在では、ピアノ伴奏とオーケストラ伴奏の両方で演奏されています。

楽曲構成

全6曲からなり、演奏時間は約30分です。

1. 第1曲 ヴィラネル (Villanelle)
若い恋人たちが春の喜びを歌う、野いちご摘みの歌です。

2. 第2曲 ばらの精 (Le Spectre de la Rose)
夜、少女が身につけたバラの精が語りかける歌です。

3. 第3曲 入り江のほとり（哀歌）(Sur les lagunes (Lamento))
恋人を失った漁夫の哀歌で、フォーレも後に「漁師の歌」として作曲しています。

4. 第4曲 君なくて (Absence)
遠くへ去った恋人に呼びかける歌です。

5. 第5曲 墓地で（月の光）(Au cimetière (Clair de lune))
墓前の木に止まる鳩の歌に託して、墓に眠る者の思いを歌います。

6. 第6曲 未知の島 (L'île inconnue)
愛と誠の地を求める女性を、旅へと誘う舟歌です。

参考文献

『作曲家別名曲解説ライブラリー19 ベルリオーズ』、音楽之友社
『ラルース世界音楽事典』、福武書店
『不滅の大作曲家 ベルリオーズ』、音楽之友社、シュザンヌ・ドゥマルケ（著）
『ベルリオーズ』(大音楽家 人と作品〈16〉)、久納慶一 (著) 、音楽之友社

外部リンク

* 夏の夜の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)

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