夏文彦

夏文彦（なつ ふみひこ）

夏文彦（本名：冨田幹雄、1944年12月18日 - 1992年8月25日）は、昭和後期に活躍した日本の作家、批評家、コラムニストです。ペンネームの由来は、中国元代の文人・夏文彦から取られています。

生涯

1944年、東京都大田区に生まれた夏文彦は、複雑な家庭環境で育ちました。幼少期には姓が何度か変わり、最終的に冨田姓を名乗るようになります。中央美術学園卒業後、山本夏彦が主催する雑誌編集部に入り、その後、出版社勤務を経てフリーとなります。

1969年、創刊間もない『週刊ポスト』に参加し、そこで田中小実昌と出会い、師事します。1970年には、黒木和雄監督の映画に役者として出演。1974年には、映画『竜馬暗殺』の企画・製作に携わりました。この映画は、新宿ゴールデン街にゆかりのある人物が多く関わったことから、「ゴールデン街が作った映画」とも呼ばれています。映画製作後、3年間原田芳雄のマネージャーを務めました。

1976年、初の小説『新学期だ、麻薬を捨てろ』を刊行。1980年代には、『戦国少年隊』シリーズを執筆し、岐阜県清見村に移住して創作活動を続けました。晩年は癌との闘病生活を送り、1992年に逝去。亡くなる直前まで、原田芳雄のための映画企画を練っていました。

作品

夏文彦は、小説、評論、映画など、幅広いジャンルで作品を発表しました。ジュブナイル小説『新学期だ、麻薬を捨てろ』や、『戦国少年隊』シリーズは、当時の若者を中心に人気を集めました。また、映画論集『映画・挑発と遊撃』では、独自の視点から映画を論じています。

主な著書

小説
新学期だ、麻薬を捨てろ（1976年）
戦国少年隊シリーズ（1980年 - 1986年）
女戦士シリーズ（1984年 - 1989年）
友よ来りて我を葬え（1989年）
ロング・グッドバイ（1993年）
評論
映画・挑発と遊撃（1978年）

映画

日本の悪霊（出演、1970年）
竜馬暗殺（企画・製作、1974年）

人物像

夏文彦は、仲間内からは「トミイ」の愛称で親しまれていました。自ら「薔薇のトミイ」と書かれた千社札を作って配るなど、ユーモアのセンスも持ち合わせていました。また、映画監督の黒木和雄や俳優の原田芳雄など、多くの文化人と親交がありました。

松田優作の死に際して「俺が入口で、優作は出口かよ」と叫んだというエピソードからも、その人間味あふれる人柄が偲ばれます。早すぎる死でしたが、夏文彦の作品は、今もなお多くの人々に読み継がれています。

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