夏言

夏言（か げん）

夏言（1482年 - 1548年）は、明代の政治家であり、字は公謹、号は桂洲、諡号は文愍。その生涯は、嘉靖帝の治世における政治的変動と密接に結びついています。

生い立ちと官界入り

夏言は広信府貴渓県（現在の江西省鷹潭市貴渓区）の出身ですが、実際には父の夏鼎の仕事の関係で北京で生まれ育ちました。父の死後、科挙に挑戦し、1510年に挙人、1517年に進士となります。最初は行人として官界に入り、その後、兵科給事中に任命され、嘉靖初年の改革にも参加しました。しかし、母の死により一時的に職を辞することになります。

政界での活躍と失脚

1527年に官界に復帰すると、礼科左給事中、兵科都給事中、吏部都給事中と順調に昇進します。特に、大礼の議の後処理において嘉靖帝の意向に沿った上奏を行ったことが皇帝の目に留まり、1531年には翰林学士に抜擢されます。しかし、この急な昇進を警戒した張璁によって無実の罪に陥れられそうになりますが、結果的に張璁が辞任することになります。

1536年には内閣大学士に任じられ、政治の中枢を担うようになります。しかし、嘉靖帝と親しかった道士の邵元節が亡くなると、次第に皇帝の信頼を失い、1542年に内閣首輔を更迭され、致仕に追い込まれます。

復帰と最期

内閣大学士が厳嵩のみになると、嘉靖帝は再び夏言を呼び戻します。1546年に夏言が内閣首輔に任命されると、それまで内閣首輔だった厳嵩との間に亀裂が生じます。夏言は、礼制改革によって出世したことで、年齢や科挙合格年次が上の厳嵩に対して尊大な態度をとるようになります。また、夏言の高慢な態度には、霍韜や郭勛も反発しており、特に郭勛は夏言によって獄死に追い込まれています。夏言は嘉靖帝から河套地方の回復を命じられますが、この作戦は失敗に終わり、厳嵩は「夏言が陝西・四川の異民族から賄賂を受け取った」という讒言を行い、夏言を失脚させます。嘉靖帝も自らの政治責任を夏言に押し付けようとし、夏言は捕らえられ拷問を受けた末に処刑されました。

死後

夏言の処刑時、息子や孫は早世していたため、男系の血筋は途絶えたとされています。しかし、娘婿である呉春・呉萊父子によって、夏言の全集が万暦年間に刊行されました。また、清の乾隆年間には、夏言の七世の孫と称する夏之端という人物がいたとされますが、史料との整合性には疑問が残ります。

夏言の生涯は、明代の政治の複雑さと、権力闘争の厳しさを物語っています。彼の高慢な性格が、結果的に自らの破滅を招いたとも言えるでしょう。彼の政治的な功績もさることながら、その波乱に満ちた人生は、歴史に深く刻まれています。

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