張璁

張璁（ちょう そう）は、明代の政治家であり、字（あざな）を秉用（へいよう）、号を羅峰（らほう）と称しました。また、嘉靖帝より孚敬（ふけい）の名と茂恭（もこう）の字を賜っています。温州府永嘉県（現在の浙江省温州市）の出身です。

生涯

張璁は、弘治11年（1498年）に郷試に合格しますが、進士の資格を得たのは正徳16年（1521年）と、47歳という晩年でした。この年、嘉靖帝が即位すると、大礼の議という重要な政治問題が発生します。この時、張璁は嘉靖帝の意見を支持する上奏を行い、その見識が認められ、翰林院学士に抜擢されました。

嘉靖5年（1525年）には、兵部右侍郎に任じられ、当時問題となっていた「李福達の獄」と呼ばれる事件の調査で功績をあげました。嘉靖6年（1526年）には、礼部尚書に昇進して内閣入りし、大礼の議の記録集である『明倫大典』の編纂に携わりました。その後、吏部尚書にも就任しています。

当初、張璁は嘉靖帝から内閣首輔である楊一清（よう いっせい）と協力して政務を行うように命じられていました。しかし、両者は対立し、嘉靖8年（1528年）には一度引退を余儀なくされます。ところが、霍韜（かく とう）による楊一清への弾劾が認められて楊一清が失脚すると、張璁は一転して内閣首輔に任ぜられました。

しかし、嘉靖帝による礼制改革の際、嘉靖帝の意向に沿った上奏を行った夏言（か げん）が重用されるようになると、張璁は危機感を抱き、夏言が嘉靖帝を追い落とそうとしていると讒言しました。しかし、その工作が露見してしまい、嘉靖10年（1530年）に辞任を余儀なくされました。

それでも、張璁は嘉靖帝からの信頼は厚く、その後も復帰と辞任を繰り返しました。嘉靖11年（1531年）には、嘉靖帝の諱である「厚熜」に通じる「璁」の字を改め、孚敬の名を賜りました。嘉靖12年（1532年）には太子大師に任じられ、最終的に引退したのは嘉靖14年（1534年）のことでした。

評価

張璁は、大礼の議で嘉靖帝の信任を得て、急速に昇進を遂げた人物です。しかし、その過程で、権力闘争に巻き込まれ、失脚も経験しました。それでも、嘉靖帝の信頼は厚く、何度も政界に復帰しています。その生涯は、明代の政治における権力闘争の激しさを物語っていると言えるでしょう。

参考資料

星斌夫「張璁」（『アジア歴史事典 6』平凡社、1984年）
岩本真利絵「嘉靖六年年末の内殿儀礼改定」「嘉靖十年の大臣召対再開」『明代の専制政治』（京都大学出版会、2019年） ISBN 978-4-8140-0206-1

もう一度検索