夕張 (軽巡洋艦)

軍艦「夕張」

「夕張」は日本海軍の軽巡洋艦として1923年に竣工しました。この艦は、当時の海軍艦艇の中で独自の設計思想を持ち、特にそのコンパクトさと重武装が特徴です。

1. 概要と設計

「夕張」は、平賀譲による設計で、全長は2890トンでありながら、5500トン型軽巡洋艦と同等の火力と速力を持つように設計されました。当初の設計は、経済的な事情からコンパクトな艦体に強力な武装を詰め込むことを目的としたものでした。この新しいアプローチは、国際的な評価を得て、特に「夕張」は「日本の巡洋艦のイメージを一新させる艦」であると評価されました。設計に関与した平賀譲の名は一躍有名になりました。

2. 軍歴と運用

1923年の竣工後、夕張は関東大震災の際に救援活動に従事し、その後も日中戦争や太平洋戦争において重要な役割を果たしました。特に1937年には、珠江で中国艦艇と交戦し、その戦果を上げています。

太平洋戦争では、開戦の際にウェーク島攻略に参加しましたが、その後も様々な海戦に参加し、特にガダルカナル島での戦闘においてその存在感を示しました。また、夕張は数回の修理や改装を経て、対空能力の強化なども図られました。

3. 設計思想の特異性

夕張の設計では、主砲を中心線上に配置し、軽巡洋艦としては十分な火力を確保しましたが、同時に防御力の革新も図られていました。特に19mm HT甲板を始め、38mmのNVNC甲板を導入し、舷側の防御機能を強化しました。このため彼女は、瞬発弾に対しても優れた耐久性を発揮したとされています。

設計上の制約から航続力や艦載機の搭載が難しく、後の時代の要請には応えられなかった部分もありますが、それでも「夕張」は新たな時代の巡洋艦の設計思想に多大な影響を与えた艦艇として評価されています。

4. 最期とその功績

夕張は1944年にアメリカの潜水艦によって雷撃を受け、最終的に沈没しました。戦没時の艦長や乗員は、その前に船体の浸水を必死に防ごうと試みましたが、定まった運命からは逃れられませんでした。その戦歴や性能は、今も多くの艦船ファンや歴史研究者に称賛され続けています。特に「夕張」が持っていた、戦艦のような重武装で小型軽巡洋艦としての役割を果たした点は、彼女の烙印とも言えるでしょう。

歴史的な価値を持つ「夕張」は、今や多くの研究や資料に取り上げられ、艦船の設計思想や運用戦略についての重要な一例となっています。

もう一度検索