夕陽のあと

映画『夕陽のあと』

『夕陽のあと』は、2019年11月8日に公開された越川道夫監督による日本映画です。鹿児島県長島町を舞台に、母になりたいと願う二人の女性の姿を通して、現代社会が抱える様々な問題を描き出します。

製作の背景

本作は、長島町の地域おこしプロジェクト「長島大陸映画」の一環として製作されました。子育てをテーマに、制作費の一部はクラウドファンディングで調達。町民がエキストラとして多数参加するなど、地域全体で映画作りを盛り上げました。

あらすじ

佐藤茜は、長島町の食堂で働きながら、子どもたちの成長を見守る日々を送っています。一方、夫と共にブリの養殖業を営む五月は、里子である7歳の豊和との特別養子縁組を心待ちにしていました。

しかし、養子縁組の手続きが進むにつれて、豊和が過去に東京のネットカフェに置き去りにされていたこと、そして実母である茜が、執行猶予付きの有罪判決を受けていたことが明らかになります。五月は、食堂で働く茜が豊和の生母だと知り、動揺を隠せません。五月は茜に島から出て行くように求めますが、茜は親権停止を申し立て、事態は複雑化していきます。

豊和の過去を知りたいと願う五月は、東京の児童相談所や茜が以前勤めていた工場を訪れます。そこで、茜が夫からDVを受けていたこと、孤独と貧困の中で誰にも助けを求められずにいたことを知ります。そして、豊和を置き去りにしたことを深く後悔している茜の苦しみを知るのです。その間、島では豊和が茜の家を訪れ、仲直りを懇願します。

東京から戻った五月は、茜を漁船に誘い、豊和との「家族」を奪わないでほしいと懇願します。茜は、血を分けた子どもと別れるつらさは分からないだろうと返し、自身の帝王切開の傷跡を見せます。二人は抱き合い、夕陽に染まる空を見つめます。祭りの日、太鼓を叩く豊和を目に焼き付け、茜は島を去る決意をするのでした。

キャスト

佐藤茜：貫地谷しほり
日野五月：山田真歩
日野豊和：松原豊和
日野優一：永井大
新見秀幸：川口覚
日野ミエ：木内みどり

スタッフ

監督：越川道夫
脚本：嶋田うれ葉

エピソード

豊和役を演じた松原豊和は、オーディションで選ばれた地元出身の少年でした。撮影当初は緊張でセリフが出てこないこともありましたが、周囲のサポートを受けながら成長していきました。他のキャストも、役作りのために長島町に滞在し、漁を体験するなど、地域に溶け込む努力を重ねました。映画で使用されている方言は、長島独特のものです。撮影期間中は天候に恵まれない日が続きましたが、重要なシーンで奇跡的に夕陽が撮影され、物語を彩りました。

貫地谷しほりは、居酒屋で茜が心情を吐露するシーンがお気に入りだと語っています。ラストシーンの夏祭りの太鼓のシーンは、真冬の12月に撮影され、寒さの中で夏の衣装を着たエキストラたちが熱演しました。

テーマ

『夕陽のあと』は、DV、乳児遺棄、不妊治療、養子縁組制度など、現代社会が抱える様々な問題に焦点を当てています。実の親子とは何か、家族とは何か、そして母性とは何かを深く考えさせられる作品です。美しい長島町の風景を背景に、登場人物たちの葛藤と再生を描き出し、観る者の心に深く響く感動を与えます。

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