夕鶴 (オペラ)

『夕鶴』（ゆうづる）は、日本の作曲家である團伊玖磨によって作曲された全1幕のオペラです。劇作家・木下順二による同名の戯曲『夕鶴』を原作としており、その美しい旋律と心に響く物語は、多くの人々に感動を与え続けています。

作曲の経緯

このオペラの作曲は、まず1949年春に、劇の付帯音楽として開始されました。その後、本格的なオペラ作品としての制作が決定され、作曲家の團伊玖磨は、原作者である木下順二から「戯曲の一言一句たりとも変更してはならない」という条件の下、作曲に取り組みました。1950年頃から作曲が開始され、翌1951年に完成に至ります。さらに、1956年10月8日には改訂版が完成しました。

初演とその後

初演は、1952年1月30日に大阪朝日会館にて、藤原歌劇団によって行われました。改訂版の初演は、1957年6月27日にチューリッヒ音楽祭にて上演されました。以来、『夕鶴』は日本国内はもとより海外でも広く上演され、2022年までに800回を超える上演回数を記録しており、日本の創作オペラとして最大のヒット作、そしてロングセラー作品としての地位を確立しています。

演奏時間

全曲の演奏時間はおよそ1時間50分です。

楽器編成

このオペラは、以下の楽器編成で演奏されます。
フルート2（1はピッコロ持ち替え）
オーボエ2
クラリネット1
ファゴット2
ホルン4
トランペット2
トロンボーン3
テューバ
ハープ
ティンパニ
トライアングル
シンバル
タムタム
小太鼓
大太鼓
弦五部（第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス）

登場人物

与ひょう（テノール）：純朴な百姓。
つう（ソプラノ）：与ひょうの妻となる美しい女性。実は鶴の化身。
運ず（バリトン）：欲深い村人。
惣ど（バス）：同じく欲深い村人。
* 子供たち（児童合唱）：村の子どもたち。

あらすじ

（詳細なあらすじについては、原典を参照してください。）

第1部
貧しい百姓の与ひょうは、傷ついた鶴を助けます。その夜、美しい女性つうが現れ、与ひょうの妻となります。つうは機織りが得意で、美しい布を織ります。その布は高値で売れますが、つうは機を織るたびに衰弱していきます。

第2部
村人たちはつうの正体が鶴ではないかと噂し始めます。欲深い運ずと惣どは、つうが鶴の姿に戻る瞬間を見ようとします。つうの正体を知った与ひょうは、つうを人間として愛したいと願いますが、村人たちの好奇心と欲によって、つうは元の鶴の姿に戻って飛び去ってしまいます。



このオペラは、人間の純粋な愛と、それに対する欲望や好奇心を描いた作品として、深く心に響く感動を与えます。團伊玖磨の美しい音楽と、木下順二の繊細な言葉によって、日本人の心を捉えて離さない名作オペラと言えるでしょう。

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