外国国章損壊罪とは？意味をやさしく解説

外国 国章損壊罪について

外国国章損壊罪は、刑法92条に定められた、外国に対する侮辱目的でその国の国旗や国章を損壊する犯罪です。この罪は、国家間の友好関係を保護する目的で設けられています。

外国国章損壊罪は、国家間の関係を良好に保つために、外国の象徴を尊重する意図のもとで規定されています。違反した場合、2年以下の懲役または20万円以下の罰金が科せられます。また、この罪は親告罪であり、外国政府からの正式な請求がなければ、起訴できません。

この罪の対象となるのは、外国の国旗や国章です。

ここでいう「外国」は、国際法で認められた独立国を指します。ただし、未承認国や国交のない国を含むかどうかについては学説が分かれています。通説では、これらの国々も「外国」に含まれると考えられています。国際連合などの国際機関は含まれません。

「国旗」は国家の権威を象徴する旗であり、「その他の国章」は、軍旗や大使館の紋章など、国家の権威を示すものを指します。これらの対象は、外国の国家機関が公に掲げているものに限ると解釈されています。

外国国章損壊罪における行為とは、対象となる国旗や国章を損壊、除去、または汚損することです。

判例では、「損壊」とは国章そのものを物理的に破壊し、その象徴としての機能を損なう行為を指します。

「除去」とは、国章をその場所から移動させたり、覆い隠したりして、その象徴としての機能を損なう行為を指します。ただし、「遮蔽」については、損壊とみなす学説と、類推解釈として処罰を否定する学説があります。

「汚損」とは、国章に嫌悪感を抱かせるものを付着させ、その象徴としての機能を損なう行為を指します。

外国国章損壊罪の法定刑は、2年以下の懲役または20万円以下の罰金です。これは、器物損壊罪よりも軽い刑罰であり、国旗や国章の財産的価値が低いとみなされるためです。

この罪は、外国を侮辱する目的で行われる必要があります。目的がない場合、窃盗罪や器物損壊罪が適用される可能性があります。「侮辱を加える」とは、その国に対する侮蔑や否定的な評価を示すことを意味します。

外国国章損壊罪は、外国政府からの請求がなければ起訴できません。これは、外国の文化や価値観を尊重し、日本の検察官の裁量に委ねることが不適切であるという考えに基づいています。また、「告訴」ではなく「請求」としているのは、外国政府に手続き上の負担をかけないためです。

この罪は、器物損壊罪や建造物等以外放火罪との関係が問題となります。観念的競合を認める学説と、法条競合を認める学説がありますが、法益が異なるため、前者が通説とされています。

台湾独立運動家が中華民国総領事館に侵入し、国旗を汚損した事件。第一審では外国国章損壊罪は成立しないと判断されましたが、控訴審で除去にあたるとされ、有罪となりました。最高裁もこれを支持しました。

2012年には、日本国旗を損壊する行為を処罰する法案が提出されましたが、成立には至りませんでした。

過去には、中華人民共和国の国旗が引き下ろされた事件や、在福岡米国領事館で星条旗が焼かれる事件が発生しています。

外国国章損壊罪は、国際関係における象徴的な意味合いを持つ犯罪であり、その適用は慎重に判断されるべきです。

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