外岡秀俊

外岡秀俊：ジャーナリズムと文学の交差点

外岡秀俊（そとおか ひでとし）は、1953年5月22日に北海道札幌市で生まれ、2021年12月23日に68歳で生涯を閉じました。彼は、小説家、ジャーナリスト、そして元朝日新聞社東京本社編集局長という、複数の顔を持つ人物でした。ペンネームとして中原清一郎も用いました。

生い立ちと学生時代

外岡は、淡水魚卸業を営む父と、裏千家茶道の教授である母のもとに生まれました。3人兄弟の末っ子として育ち、幼少期から豊かな文化に触れる環境で育ちました。北海道学芸大学附属札幌小学校、同中学校を経て、北海道札幌南高等学校に進学。高校時代には剣道部に所属する傍ら、学園闘争にも参加し、暫定生徒会執行部で生徒会長を務め、全校生徒集会でストライキを決議するなど、学生運動の中心人物の一人として活動しました。この頃の同級生には、作家の久間十義や経済学者の高橋伸彰がいます。

作家としての才能開花

東京大学文科Ⅰ類に進学後、外岡は初めての小説『白い蝙蝠は飛ぶ』を発表し、学友会「銀杏並木賞」を受賞しました。さらに、東京大学法学部に在籍中の1976年には、石川啄木をテーマにした小説『北帰行』で文藝賞を受賞し、作家としての才能を広く認められました。

ジャーナリストとしてのキャリア

1977年に東京大学法学部を卒業後、外岡は朝日新聞社に入社しました。新潟支局、横浜支局での勤務を経て、学芸部、社会部（最高裁判所担当）記者として活躍。その後、ニューヨーク、ロンドン特派員、論説委員、ヨーロッパ総局長と、国内外の重要なポストを歴任しました。論説委員時代には、沖縄米軍基地問題の取材班キャップとして、大田昌秀知事の「鉄血勤皇隊」体験を報じるなど、ジャーナリストとして卓越した取材力と分析力を発揮しました。2011年3月には、両親の介護を理由に朝日新聞社を早期退職し、故郷の札幌に戻りました。

作家活動と晩年

朝日新聞社退職後、外岡は札幌を拠点に作家、講演活動を再開。2014年1月には、雑誌「文藝」に中原清一郎名義で新作長編小説『カノン』を発表しました。また、北海道大学公共政策大学院では上席研究員を務めるなど、研究活動にも携わりました。

多彩な著作活動

外岡は、ジャーナリストとしての視点と作家としての表現力を活かし、数多くの著作を世に送り出しました。代表作には、『北帰行』、『アメリカの肖像』、『地震と社会 「阪神大震災」記』、『情報のさばき方 新聞記者の実戦ヒント』、『震災と原発 国家の過ち 文学で読み解く「3・11」』などがあります。また、中原清一郎名義では、『未だ王化に染はず』、『カノン』、『ドラゴン・オプション』などを発表しています。

人物像

文藝賞受賞後、長く新聞記者として活動していた外岡ですが、1986年に中原清一郎名義で発表した『未だ王化に染はず』が、小田光雄の調査によって外岡の著書であることが判明しました。また、2014年には朝日新聞社長就任の打診を受けましたが、固辞しています。外岡は、ジャーナリズムの世界で培った知識と経験を、文学作品や社会評論に昇華させ、その深い洞察力と幅広い知識は、多くの人々に影響を与えました。

死去

外岡秀俊は、2021年12月23日、札幌国際スキー場にて心不全のため急逝しました。彼の死は、ジャーナリズムと文学の両分野にとって大きな損失となりました。

参考文献

「逍遥通信」第七号（2022年） 外岡秀俊年譜
『外岡秀俊という新聞記者がいた』及川智洋著（2024年、田畑書店）

外岡秀俊は、その生涯を通じて、ジャーナリズムと文学の両面で卓越した才能を発揮し、社会に多大な貢献をした人物として、今後も語り継がれるでしょう。

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