夙

夙（しゅく）についての詳細

夙（しゅく）は、中世から近世にかけて近畿地方を中心に生息していた賎民の一群を指します。この社会階層は、非人身分の分解過程で生まれたものであり、被差別部落の起源の一部としての側面を持っています。一般的には、夙は下位の賎民として扱われていましたが、彼らに対する差別は他の賎民と比べてそれほど強烈ではなかったと言われています。

夙の実態

夙については、多くの伝承が残されており、その多くが、彼らがかわた村よりも下位の賎民であったことを示しています。一部の夙は、かわた村の直接的な支配下にあり、かわた村の中には「夙筋」という系列が存在し、その中でもさらに差別的に扱われていました。歴史的記録である『日本財政経済史料』第八巻には、夙が三味線や鞁弓を手にして小歌や芝居などの雑芸能に従事していたことが記されています。

また、江戸時代には夙村または宿村と呼ばれる集落が各地に見られ、特に九州の高島では「四苦」と称されることがあり、安政時代には穢多と改名されていますが、やはり夙の者であったと考えられています。このような存在は五畿内を越えた広範囲にも存在しており、夙の身分や生活は地域によってさまざまでした。ある村では他の百姓とほとんど変わらない生活をしていたかと思えば、他の村では何らかの差別を受けていました。

都市部では、夙が行刑の執行に雇われ、非人の身分になった例もあります。奈良の北山夙や兵庫津の夙などがその例です。特に兵庫津では、慶長17年（1612年）の記録によって、夙が他の地域から供給される食料や施しを受けて厚遇されていたことがわかります。

夙は、また穢多の手下であり、平日は三味線や鼓弓を弾き、小唄を歌い、あるいは小芝居を演じる者たちで、女子供は草履を作って商いをする生活を送っていました。しかし、夙と穢多の間には通婚がなかったため、彼らは社会の中で明確に分かれていました。紀伊地方では夙と陰陽師は通婚しなかったという記録もあり、それぞれの社会的役割が異なることを示しています。

夙の社会的地位

香畝生によると、夙の中には大地主や大商人として成功した者も多く、徳川時代には百姓と穢多との中間に位置していたとされています。また、夙によって構築された独立した村落が存在しており、特に大阪の河内地域には大きな夙村があったことが知られています。

明治時代に入ると、夙は「平民同様たるべき事」とされ、被差別部落としての存在が認識されることになります。夙村は、一般的には非人村と同様に未指定の地区として存続していました。

夙の起源

夙の起源にはいくつかの異説がありますが、特に有力なのは「守戸」が転訛したという説です。しかし、柳田國男によってこの説は否定されています。夙は中世の時代に、寺社勢力によって非人身分の人々が住まう場所を提供されていたことが、歴史的にも確認されています。混乱した社会状況の中で間接的に生活手段を遮断された人々が、宿としての生活を強いられていたことも記録にあります。

かわたとの対立

近世に入ると、夙とかわたの間で特権を巡る争いが起こるようになります。この争いは近世封建制の成立初期に見られましたが、江戸時代の後期には目立たなくなりました。特に播磨では、神社祭礼を巡る争いがあり、夙がかわたの従属的存在であることが明らかになっています。いくつかの史料によれば、夙はかわたとの身分的な下位関係にあったとされています。

近世では、夙がかわた身分へと組み込まれることがあり、中には「宿村」と呼ばれる地域が形成されました。これに対し、丹波国の一部や摂津国の村も過去には夙であったとされ、次第に別の身分に変わっていく過程が記録されています。

結論

夙は、中世から近世にかけて、地域によって異なる状況や身分を有していた賎民の一団です。その生活や社会的地位は多様であり、近世におけるかわたとの関係性や、他の社会的役割との違いが彼らの歴史を形成しています。その存在は現在もなお、日本の歴史の中で興味深いテーマの一つとなっています。

もう一度検索