多々良木ダム

多々良木ダムの概要と歴史

多々良木ダム（たたらぎダム）は、兵庫県朝来市に位置し、一級河川である円山川水系の多々良木川に建設された特殊な構造のダムです。このダムは関西電力によって管理されており、主に発電専用として利用されています。ダムの高さは64.5メートルであり、アスファルトフェイシングフィルダムという型式に分類されます。

水力発電の大規模な拠点

多々良木ダムは、関西の電力需要の増加に応じて建設されました。ダムは水力発電を主目的としており、上流に位置する黒川ダムとの間で揚水発電を行っています。このシステムによって、多々良木ダムは最大で193万キロワットの電力を生成でき、日本国内で最大規模の水力発電所として知られています。

建設の経緯

高度経済成長が続いた1970年代、関西地方でも電力需要が急増しました。これに伴い、関西電力は新たな発電所の建設を急がなければならず、特に昼間のピーク時に対応できる方法が求められました。そこで、揚水発電は注目され、関西電力は純揚水式発電の建設を決意しました。

当初の計画では、京都府にある京都大学芦生研究林内に上池を建設する予定でしたが、環境問題から反対意見が相次ぎ、その計画は断念されました。第二候補の現在の場所が選ばれ、1970年に建設が始まりました。

ダムの構造と特徴

多々良木ダムは、他のダムと異なりアスファルトフェイシングフィルダムと呼ばれる特有の構造を採用しています。これにより、ダムの上流面がアスファルトで舗装されており、水を遮る構造となっています。日本では、1968年に福島県に建設された大津岐ダムが最初のアスファルトフェイシングフィルダムでしたが、多々良木ダムは西日本で初めてこの構造で建設されました。

奥多々良木発電所

ダムの下には奥多々良木発電所が設置されており、これは関西電力にとって重要な発電所の一つです。黒川ダムを上池とし、多々良木ダムが下池として機能しています。この発電所は、日本海に流れる円山川水系での水力発電を行い、387.5メートルの落差を利用して、最大出力1,200,000キロワットを確保しています。

建設当初は環境への配慮が求められたため、すべての設備は地下100メートルの深さに設置されています。1974年に完成し、その当時、出力で日本一の水力発電所として広く知られていました。

発電能力の増強

多々良木ダムの完成後も、電力需要は依然として増え続けました。特に夏季には冷房需要が急増し、電力供給の限界が問題視されるようになりました。これを受けて、関西電力は黒川ダムに新たな大河内発電所を建設し、さらなる発電能力の強化を図りました。

1998年には、奥多々良木発電所の増設工事が完了し、認可出力が1,932,000キロワットに達しました。この出力は日本最大となり、今でも多々良木ダムは関西電力の重要な水源とされています。

観光と訪問

ダムの下流には「あさご芸術の森」という緑地公園が整備され、ここには美術館や野外彫刻公園があります。訪問者は、奥多々良木発電所の見学が可能で、毎年6月にはダム湖を周回するマラソン大会も開催されています。

また、ダム周辺は桜の名所としても知られており、多くの観光客が春に訪れます。アクセスも便利で、多々良木ダムを起点に多くの観光地にも足を運べる環境が整っています。

以上のように、多々良木ダムは発電だけでなく、観光スポットとしても魅力的な存在であり、地域社会においても重要な役割を果たしています。

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