多久茂矩

多久茂矩は、江戸時代前期の武士であり、肥前国佐賀藩に仕えた藩士です。多久鍋島家（後多久氏）の3代目当主として、その名を知られています。彼は、2代多久邑主である多久茂辰の子として生まれました。

茂矩の生涯において特筆すべきは、藩政における重要な役割を担ったことです。正保3年（1646年）、父・茂辰が返済不能な私借銀を作った責任を問われ、請役を免ぜられます。しかし、寛文12年（1672年）には、鍋島茂紀とともに請役として再び藩政に参画し、その手腕を発揮しました。貞享4年（1687年）に諫早茂紀が請役となるまで、この職務を全うしました。請役とは、藩の財政や行政を担う重要な役職であり、その職務を通して、藩の運営に大きく貢献しました。

また、茂矩は地域整備にも力を注ぎました。特に、雑木が生い茂り、通行が困難であった唐津往還の整備に尽力し、街道を切り開きました。さらに、宿場を設けることで、人々の往来を円滑にし、地域の発展に貢献しました。これらの事業は、地域経済の活性化にもつながり、領民から大いに感謝されたことでしょう。

家庭においては、実子の清信が姉川鍋島家の鍋島清長の養子となっていたため、跡継ぎの問題が生じました。そこで、貞享3年（1686年）に、鍋島光茂の四男である茂文を養子に迎え、家督を譲りました。この養子縁組は、多久家の後継者を確保する上で重要な決定でした。

元禄2年（1690年）、多久茂矩は生涯を終えました。彼の死後も、その業績は長く語り継がれ、佐賀藩における名君の一人として、歴史に名を刻んでいます。多久茂矩は、藩政における貢献だけでなく、地域整備にも尽力し、領民のために尽くした人物として、後世に尊敬されています。

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