鍋島茂紀

鍋島茂紀は、江戸時代前期から中期にかけての武士で、肥前国佐賀藩士であり、武雄鍋島家の4代目当主です。佐賀藩の自治領である武雄の領主として、藩政にも深く関わりました。文献によっては、鍋島若狭、鍋島十左衛門の名で記されていることもあります。

茂紀は寛永19年(1642年)、22代武雄領主の鍋島茂和の子として誕生しました。しかし、生母が正室に仕える女中であったため、正室への配慮から密かに諫早で養育されました。その後、正室に子が生まれなかったことから、承応元年(1652年)に武雄へ呼び戻されています。

寛文2年(1662年)に家督を相続しますが、この時期は佐賀藩政において、龍造寺四家(諫早、武雄、多久、須古)が交代で独占していた藩の要職である請役の地位に、鍋島一門(白石家、横岳家)が任命されるなど、龍造寺一門の勢力を抑制しようとする動きが見られました。しかし、寛文12年(1672年)には、茂紀と多久茂矩が共に請役に就任し、龍造寺一門による執政体制が復活します。この頃、茂紀は宗門改役も担当していた記録が残っています。貞享元年(1684年)には、請役に茂紀、多久茂矩、諫早茂元が任じられ、龍造寺系の3人体制となります。その後、貞享4年(1687年)には請役が一人体制となり、茂紀が任命されました。

これに先立つ寛文5年(1665年)には、慶長7年(1602年)から続いていた江戸証人制度が廃止されました。この制度は、佐賀藩鍋島氏だけでなく、龍造寺四家も江戸に人質を差し出すというものであり、廃止によって武雄鍋島家は江戸に人質を出す必要がなくなりました。元禄6年(1693年)7月には、筑前国黒田藩との境界争いの際に、茂紀は藩主の代理として多久茂文と共に幕府の派遣役人の臨検に立ち会っています。

元禄12年(1699年)5月、佐賀藩3代藩主の鍋島綱茂は、龍造寺四家に対し親類と同格の地位を与えました。これは、それまで親類として扱われてきた鍋島一門(白石鍋島、川久保神代、久保田村田、村田鍋島)と龍造寺四家(諫早、武雄、多久、須古)を区別し、前者を「親類」、後者を「親類同格」として、身分秩序を明確にするものでした。このことから、茂紀が武雄領主であった時代は、武雄鍋島家を含む龍造寺四家の身分が大きく変化し、定着する時期であったと言えるでしょう。

茂紀は、正徳6年(1716年)に亡くなり、その後は茂正が家督を継ぎました。彼の生涯は、佐賀藩における龍造寺一門の勢力変動と、それに伴う武雄鍋島家の地位の変化を象徴するものでした。

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