鍋島光茂

鍋島光茂（なべしま みつしげ）

鍋島光茂は、江戸時代前期の大名であり、肥前国佐賀藩の第2代藩主です。歌人としても知られ、二条流歌道の宗匠である三条西実教から古今伝授を受けました。徳川家康の曾孫を母に持つため、家康の玄孫にあたります。

生涯

寛永9年（1632年）、鍋島忠直（鍋島勝茂の四男）の嫡男として誕生しました。母は姫路藩主・松平忠明の長女である牟利（無垢子）です。元服後、3代将軍・徳川家光から偏諱を受け、光茂と名乗りました。

明暦3年（1657年）、祖父の勝茂の跡を継ぎました。寛文2年（1662年）には、幕府に先駆けて殉死を禁止しました。天和3年（1683年）には、格式差のなかった蓮池藩、小城藩、鹿島藩の三支藩に対し、三家格式を制定し、佐賀藩の支配下に置きました。

この間、寛文2年（1662年）には佐賀城内に向陽軒御社を設け、貞享4年（1687年）にはここに居所を移して「東御屋敷」と称しました。ただし、政務の際には本丸に出ることもあったとされています。元禄4年（1691年）には、佐賀城内二の丸に聖堂を建立しました。

元禄8年（1695年）に隠居し、家督を長男の綱茂に譲りました。本丸と二の丸も完全に譲り、翌年に隠居後初めて江戸から佐賀に移るとそのまま東御屋敷に入りました。

元禄13年（1700年）に死去。享年69歳でした。

京都に出向く大名行列の際、他藩と比べて装束が見劣りしていたという記述があり、財政的に豊かではなかったと推測されています。

光茂には、山本常朝が小姓として仕えていました。光茂の死後、常朝は出家し、田代陣基との対談から『葉隠』が生まれました。

三支藩の統制

佐賀藩には、蓮池藩、小城藩、鹿島藩の三支藩があり、藩主は初代藩主・鍋島勝茂の子や弟であったため、当初は格式の差がありませんでした。しかし、光茂は支藩への統制を強化しました。延宝5年（1677年）には、小城藩主・鍋島直能が藩祖・鍋島直茂が称した加賀守を名乗ったことを咎めました。また、延宝6年（1678年）には、異父弟である蓮池藩主・鍋島直之が、独断で4代将軍・徳川家綱に太刀と馬代を献上したことを咎めました。

さらに、支藩の家臣を陪臣として露骨に差別待遇したため、佐賀に在住していた支藩家臣は佐賀を去っていきました。三支藩は連名で光茂に抗議しましたが、光茂は天和3年（1683年）に三家格式を制定して三支藩を完全に支配下に置くことに成功し、世禄制を実施しました。

系譜

光茂は生涯で41人もの子女をもうけました。

父：鍋島忠直
母：牟利、無垢子 - 松平忠明の長女
養父：鍋島勝茂
正室：虎姫（柳線院） - 上杉定勝の娘
長男：鍋島綱茂（1652-1707） - 3代藩主
女子：千 - 土井利重正室
女子：水野忠直正室
女子：伊東祐実継室
継室：甘姫（栄正院）- 松平光通の養女、中院通純の娘
次男：鍋島吉茂（1664-1730） - 4代藩主。初め矩茂。勝茂の十一男・神代直長の婿養子となり神代直利を名乗るが、綱茂の養子となるため実家に戻る）
継々室：振（霊寿院） - 鍋島直朝の養女、執行宗全の娘
十四男：鍋島辰茂
十五男：鍋島宗茂（1687-1755） - 5代藩主。初め直董。神代直利（鍋島吉茂）の跡を継いで神代直堅を名乗るが、吉茂より佐賀藩主の跡目に指名され実家に戻る）
十六男：鍋島茂之 - 鍋島清信の養子
十七男：鍋島徳寛
十八男：神代直方 - 神代直堅（鍋島宗茂）が佐賀藩主家に戻ったのに伴い神代家を継承。以降、直恭─直贇─直興と続いた後、直珍（のちの鍋島直与）が神代家を継いだ
女子：鍋島直恒正室
女子：鍋島嵩就の養女
側室：廉
四男：多久茂文（1670-1711） - 多久茂矩の養子
側室：小侍従
女子：諫早茂照室
側室：フジ
女子：鍋島直朗室
側室：真木氏
六男：村田政盛 - 村田政辰の養子
九男：鍋島長行
側室：村山氏
女子：鍋島茂正室
側室：岡本氏
女子：岡部盛明正室
側室：鳥巣氏
側室：斎藤氏
側室：戸田氏
側室：須古氏
生母不明の子女
女子：鍋島武興室
養子
* 女子：興祥院 - 鍋島直称正室、小花和成武の娘

備考

ドラマ『水戸黄門』（当時は「ナショナル劇場」）第5部・第24話「二人の御老公（佐賀）」（1974年放送）では、森繁久彌が鍋島光茂を演じ、水戸光圀（東野英治郎）の親友であり悪友という設定で描かれました。ちなみに、森繁は光圀役の候補としても挙げられていました。

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