多聞寺 (墨田区)

多聞寺の魅力と歴史

東京都墨田区に位置する多聞寺（たもんじ）は、真言宗智山派の寺院として、多くの人々に親しまれています。1995年に建てられた本堂を中心に、境内には歴史的な価値を持つ建物や伝説が数多く存在し、訪れる者の心を惹きつけます。

寺の歴史と変遷

多聞寺の起源は、天徳年間（957年～961年）にまでさかのぼります。この時期に創建された初代の寺は、当初「大鏡山明王院隅田寺」と呼ばれ、本尊は不動明王でした。しかし、天正年間（1573年～1593年）に住職の鑁海（ばんかい）によって、現在の位置に移されると、寺の名前は「隅田山吉祥院多聞寺」と改名され、本尊も毘沙門天に変更されました。新たな寺院は慶長11年（1606年）に建立され、その後、文化年間（1804～1818年）には隅田川七福神の一つとしても知られるようになりました。

多聞寺は、関東大震災や東京大空襲の災害を乗り越え、墨田区でも貴重な歴史を持つ寺院として残っています。境内にある木造茅葺切妻造の山門は、享保3年（1718年）に焼失後再建されたもので、地域において最古の建物とされています。さらに、山門の左側には「毘沙門天」の案内碑が立っており、これは当時の政治や文化に影響を与えた榎本武揚の筆によるものです。

伝説に触れる

境内には「狸塚」という場所があり、ここは悪戯を繰り返す化け狸たちを葬った場所として知られています。このため、多聞寺は「たぬき寺」とも呼ばれています。江戸時代以前、この地域は草木が茂り、毒蛇や妖怪狸などが出没する恐ろしい場所であったと伝えられています。そんな中、鑁海和尚がこの地に寺を建立し、妖怪を追い払うことを決意しましたが、化け狸の悪戯は続きました。ある晩、和尚が夢に現れた大入道に脅かされた結果、一心に本尊を拝むことで毘沙門天が現れ、妖怪狸を説得したとされています。朝になると、二匹の狸が寺の門前で見つかり、和尚と村人は彼らを哀れんで供養のために狸塚を築いたのです。

墓所とその他の施設

境内には、映画人たちの共同墓も存在します。これは多聞寺を拠点とする映画界の関係者によって建立された合葬墓で、映画文化とのつながりを感じさせます。そして、東京大空襲で被災した浅草国際劇場の鉄骨や、1991年に発見された戦災樹木の屋外展示も行われており、ここでの歴史的な出来事を知ることができます。

アクセス

多聞寺へのアクセスは非常に便利で、東武伊勢崎線の鐘ヶ淵駅から徒歩7分、また堀切駅からは徒歩10分程度で到着します。

多聞寺はその歴史や伝説、貴重な建物を通じて、地域の文化遺産の一部となっています。訪れることで、歴史の物語や伝説に触れることができる貴重なスポットです。

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