多食亜目

多食亜目（Polyphaga）

多食亜目（学名：Polyphaga）は、コウチュウ目（甲虫類）に属する4つの亜目の中で、最も大きなグループです。その多様性は際立っており、およそ144の科に分類され、30万種以上もの種が確認されています。これは、甲虫全体の約90%を占める巨大な割合です。

学名「Polyphaga」は、ギリシャ語の「poly」（多い）と「phagein」（食べる）に由来し、その名の通り、多岐にわたる食性を持つ種が含まれています。

形態的な特徴

多食亜目の共有派生形質として、以下の2点が挙げられます。

腹部の特徴: 最初の腹節が、後脚の基節（付け根の部分）によって分断されていない。
胸部の特徴: 前胸において、側板（胸部の側面を構成する部分）が背板に覆われて「cryptopleuron」という構造になるため、背板との間の縫合線が外からは見えなくなる。

これらの特徴は、多食亜目を他の亜目と区別する上で重要な手がかりとなります。

分類

多食亜目は、さらに以下の6つの下目に分類されます。

マキムシモドキ下目 (Derodontiformia)
ハネカクシ下目 (Staphyliniformia) - ハネカクシ、ガムシなど
コガネムシ下目 (Scarabaeiformia) - カブトムシ、クワガタムシ、コガネムシなど
ナガシンクイ下目 (Bostrichiformia) - カツオブシムシ、シバンムシなど
コメツキムシ下目 (Elateriformia) - コメツキムシ、ホタル、タマムシなど
ヒラタムシ下目 (Cucujiformia) - テントウムシ、カミキリムシ、ゾウムシ、ハムシなど

このうち、ハネカクシ下目は側系統群であり、多食亜目の中でより祖先的な形態を持つ種が含まれていると考えられています。

種数が多い上科としては、以下のものが挙げられます。

ハネカクシ上科 (Staphylinoidea) - 約48,000種
コガネムシ上科 (Scarabaeoidea) - 約35,000種
タマムシ上科 (Buprestoidea) - 約14,000種
コメツキムシ上科 (Elateroidea) - 約23,000種
ゾウムシ上科 (Curculionoidea) - 約70,000種
ゴミムシダマシ上科 (Tenebrionoidea) - 約35,000種
* ハムシ上科 (Chrysomeloidea) - 約58,000種

これらの上科だけでも、非常に多くの種が含まれていることが分かります。

系統

Hunt,T et al. (2007)の研究によると、多食亜目の系統関係は以下のように推定されています。

(系統樹の図は省略)

まとめ

多食亜目は、甲虫類の中で圧倒的な多様性を誇るグループです。その分類や系統関係は複雑であり、現在も研究が進められています。多食亜目の昆虫たちは、様々な環境に適応し、多様な生態を営んでおり、自然界において重要な役割を果たしています。

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