夜明けの旗 松本治一郎伝

映画『夜明けの旗 松本治一郎伝』について

『夜明けの旗 松本治一郎伝』は、1976年10月16日に公開された日本映画です。部落解放運動の指導者として知られる松本治一郎の生涯を描いた作品で、東映と部落解放同盟の提携によって製作されました。監督は山下耕作が務め、主演は伊吹吾郎が演じています。

概要

この映画は、松本治一郎の没後10年を記念して企画されました。東映は当時、実録路線と呼ばれるジャンルの作品を多く製作しており、本作もその一つとして位置づけられます。しかし、単なる伝記映画にとどまらず、部落解放運動の歴史的背景や、当時の社会状況、人々の心情なども描かれています。

制作の背景

1976年の東映は、岡田茂社長の主導により「健全喜劇・スポーツ映画路線」を推進していましたが、興行成績が低迷していました。そこで、路線変更を行い、話題性のある「見世物映画」路線へと転換を図ります。その一環として、実録路線をさらに過激にした「ドキュメンタリー・ドラマ路線」を新設し、本作もその一つとして制作されました。当初は『人間解放』というタイトルで告知されていましたが、最終的に『夜明けの旗・松本治一郎伝』というタイトルに変更されました。

キャスト

松本治一郎：伊吹吾郎
松本次吉：浜村純
松本ちよ：毛利菊枝
松本次七：滝田裕介
松本鶴吉：品川隆二
大谷虎松：田中邦衛
下田半三郎：長門勇
下田清（子供）：道井和仁
下田清（成人）：山田政則
花田慈円：小池朝雄
宮崎友五郎：北村英三
葉村佑介：岡田裕介
矢頭タキ：檀ふみ

その他、多くの俳優が出演しています。

スタッフ

製作：岡田茂
企画：高岩淡、日下部五朗、本田達男、佐藤雅夫
脚本：棚田吾郎、野波静雄
音楽：木下忠司
撮影：増田敏雄
美術監督：鈴木孝俊
監督：山下耕作

監督選定の経緯

当初、監督には中島貞夫が候補に挙がりましたが、中島が部落解放同盟に提案した内容が受け入れられず、山下耕作が監督を務めることになりました。

製作発表会見

1976年8月24日に行われた製作発表会見では、岡田社長が部落解放同盟との完全提携を強調し、部落解放同盟側も全面的協力を約束しました。山下監督は、松本治一郎の伝記を読んで感銘を受け、多くの人に彼のことを知ってほしいと語りました。

撮影と公開

撮影は1976年8月21日にクランクインしました。公開形態としては、組織動員による興行が中心となりました。東映の主力館では、本作と『狭山裁判』を組み合わせた上映が行われましたが、その他の劇場では、他の実録路線の作品と組み合わせて上映されるケースが多かったようです。

エピソード

山城新伍は、岡田社長が部落解放同盟の会長に対し、「もっと切符を買え」と発言していたというエピソードを語っています。

評価

『夜明けの旗 松本治一郎伝』は、松本治一郎の生涯を描いた作品としてだけでなく、当時の社会状況や部落解放運動について考える上で、重要な資料となる映画と言えるでしょう。しかし、興行形態は組織動員に頼った部分が大きく、一般的な映画ファンには馴染みが薄い作品かもしれません。

外部リンク

夜明けの旗 松本治一郎伝 - 日本映画データベース
夜明けの旗 松本治一郎伝 - allcinema
夜明けの旗 松本治一郎伝 - KINENOTE
夜明けの旗 松本治一郎伝 - MOVIE WALKER PRESS
* 夜明けの旗 松本治一郎伝 - 映画.com


この作品は、松本治一郎という一人の人物の人生を通して、日本の社会が抱えていた差別問題に光を当てています。実録路線でありながら、ドラマとしても見応えがあり、多くの人々に考えさせられる作品です。

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