夢がたり

久保田早紀のファーストアルバム『夢がたり』は、1979年12月8日にCBS・ソニーからリリースされました。このアルバムは、彼女のデビューシングル「異邦人 -シルクロードのテーマ-」がオリコンをはじめとする各チャートで1位を獲得する大ヒットとなった直後に発表されました。

当初の発売予定日は12月21日でしたが、「異邦人」のヒットによる話題性をアルバムのセールスにつなげるため、12月8日に前倒しされました。「異邦人」はミリオンセラーを記録し、1980年の年間チャートで2位に輝きましたが、久保田がテレビの歌番組に出演し始めたのは、ちょうどこのアルバムが発売された12月頃でした。そのため、このアルバムも大きなヒットを記録しました。

アルバム制作にあたり、久保田はプロデューサーの金子文枝と、3作分くらいの展開について話し合ったといいます。本作では、はっきりとした異国ではなく、横浜や神戸のような、日本にも存在しそうな場所を連想させるような、無国籍な雰囲気を表現したかったと語っています。また、幼少期に訪れた場所や本で読んだ世界観を反映させたいという久保田の提案に、金子も賛同したことで、このような内容になったそうです。

収録曲のうち、1曲目の「プロローグ…夢がたり」以外は、半分ほどがアマチュア時代に書かれた曲で、残りの曲にはデビュー前の7月に母親と行ったヨーロッパ旅行の思い出が反映されています。A-5「ギター弾きを見ませんか」は、1991年に鷲尾いさ子が、2017年には辛島美里がカバーしています。また、アルバムの最後に収録されたB-5「星空の少年」は、後に久保田がパーソナリティを務めたラジオ番組「Viva! スカイウォッチング」のテーマソングとして使用されました。

アルバムのテーマは、「一日の始まりから夜更けまで、心に広がる風景」であり、全編にわたって異国情緒が漂い、無国籍的で非日常的な雰囲気が特徴です。時代背景が不明瞭で、SF的な要素も感じられます。天体観測、ギリシア神話、古代文明、宗教などに興味を持っていた久保田にとって、それは浮かんでは消える異国の幻想であり、時空を超えた心の旅でもありました。そして、タイトルの通り、全体でひとつの夢物語を語るような曲順と統一感が意識されています。

オリコンアルバムチャートでは、LPレコードとカセットテープの両方で1位を獲得し、LPは21週、カセットは27週にわたってTOP100位内にチャートインするというロングセラーとなりました。1980年の年間ランキングでは4位にランクインしています。

1990年には「CD選書」として初のCDリリースが行われました。2007年にはリマスタリングが施され、完全生産限定盤/紙ジャケット仕様で再リリースされました。リマスタリング盤は、2013年にBlu-spec CD2盤としても再びリリースされています。また、音楽配信サイトでは、ハイレゾ音源のダウンロード購入も可能です。

収録曲は以下の通りです。

プロローグ…夢がたり
異邦人 -シルクロードのテーマ-
朝
サラーム
ギター弾きを見ませんか
夏
都会の絵本
九月の色
オレンジ・エアメール・スペシャル
星空の少年

参加ミュージシャンに関する情報は提供されていません。

発売履歴は以下の通りです。

1979年：LP、カセットテープ
1990年：CD（CD選書）
2007年：CD（完全生産限定盤/紙ジャケット仕様）
2013年：CD（Blu-spec CD2盤）

このアルバムは、久保田早紀の音楽性を象徴する作品として、現在も多くのファンに愛されています。

もう一度検索