夢の子供たち

作品概要

エドワード・エルガー作曲による『夢の子供たち』（Dream Children）作品43は、1902年に書かれた小オーケストラのための美しい楽曲です。イギリスの随筆家チャールズ・ラムの同名の随筆に触発されたこの作品は、繊細で内省的な響きを持ち、エルガーの叙情性が遺憾なく発揮されています。2つの楽章から構成され、短いながらも奥行きのある音楽世界を描き出しています。

作曲の背景

本作品が作曲された1902年という時期は、エルガーが『エニグマ変奏曲』や『威風堂々』第1番などを発表し、音楽家としての評価が確立され、名声が広く知られるようになった頃にあたります。そうした円熟期において、エルガーはしばしば生活費を補うために小品を作曲していましたが、珍しいことにこの『夢の子供たち』は特定の依頼によるものではなく、エルガー自身の意思で書かれました。音楽評論家のマイケル・ケネディは、エルガーがかつて構想していた、英雄チャールズ・ゴードンを記念する交響曲案のために用意されていた未発表の楽想の一部が、この作品に転用された可能性を指摘しています。いずれの楽章も規模は小さいですが、これはエルガーがしばしば採用した作曲手法、すなわち細部を作り上げてから全体を構成するという慣習とも関連しています。

霊感源：チャールズ・ラムの随筆

本作は、イギリスの随筆家チャールズ・ラムが1822年に発表した傑作『エリア随筆』に収められた一編、「夢の子供たち、ある夢想（Dream-Children ; A Reverie）」から深い霊感を得ています。エルガーはこの随筆への敬意を示すかのように、楽譜の冒頭にその一部を書き記しました。この随筆は、語り手が自身の夢の中に現れた「小さな者たち（little ones）」、アリスとジョンに語りかける形式で進みます。語り手は子供たちに、今は亡き曾祖母フィールドと彼女が暮らした古い家での思い出、そしてかつて熱烈に愛したもう一人のアリスへの叶わぬ想いやその後の失意を、切々と語り聞かせます。しかし物語の終盤、子供たちは自分たちが実在ではなく、単なる「夢」であり「なり得たかもしれなかったもの」に過ぎないことを告げ、語り手の視界から次第に消え去っていきます。この儚く内省的な内容が、エルガーの音楽に強く影響を与えています。

興味深いことに、「アリス」という名前はエルガー自身の人生においても重要な意味を持っていました。彼の妻はアリス・ロバーツであり、また後に彼の作品に多くの霊感を与えることになる友人アリス・ステュアート＝ウォートリー夫人との出会いもこの1902年でした。ただし、後者との親密な交流が始まるのはこの作品の作曲よりも後のことになります。

出版と初演

総譜とパート譜は、最初に1902年にロンドンのジョゼフ・ウィリアムズ社から出版されました。その後、1911年にはマインツのショット社からも刊行されています。この際、『愛の挨拶』の場合と同様に、フランス語の「Enfants d'un Rêve」というタイトルが主として掲げられ、その下に英語の「（Dream-Children）」が併記されました。これは、フランス語のタイトルの方が商業的に成功しやすいという出版社の意見をエルガーが受け入れたためと言われています。作品は特定の人物に献呈されていません。

初演は1902年9月4日、ロンドンのクイーンズ・ホールにて、指揮者アーサー・ペインのもとで行われました。

楽器編成

本作品は小オーケストラのために書かれており、以下の楽器で構成されます。

フルート2
オーボエ2
クラリネット2
ファゴット2
ホルン4
ティンパニ（3つ）
ハープ
弦五部（ヴァイオリン第1、第2、ヴィオラ、チェロ、コントラバス）

楽曲構成

作品は対照的な性格を持つ2つの楽章からなります。

第1楽章

アンダンテ、12/8拍子、ト短調。短い1小節の序奏の後、クラリネットが憂いを帯びた、穏やかな主要旋律を奏で始めます。この旋律は作品全体を通して重要な役割を果たします。中間部では、この主題が変ホ長調に移調されてより温かみのある響きで展開されますが、再び元のト短調に戻り、最後は静かに、そして次第に弱まりながら最弱音（pppp）の中に消え入るように閉じられます。

第2楽章

アレグレット・ピアチェーヴォレ、3/8拍子、ト長調。前奏はなく、クラリネットが軽やかでどこか懐かしい響きを持つ主要旋律を提示して始まります。「ピアチェーヴォレ（piacevole）」とは「心地よく」という意味で、楽章の明るく流麗な性格を示しています。曲は快活に進み、中間部ではオーボエとクラリネットによって、より表情豊かな新しい旋律が奏でられます。主要旋律が再現された後、中間部の旋律も回想され、一度終わったかのように思われます。しかし、ここで再びテンポをアンダンテ、拍子を12/8、調性をト短調とし、第1楽章の主要主題が静かに回想されます。この第1楽章主題の回帰によって、全曲は夢想的な雰囲気の中で、内省的に、そして静かに幕を閉じます。この構成は、チャールズ・ラムの随筆における「夢」の回想とその儚い終結を音楽的に表現していると解釈することもできるでしょう。

両楽章は対照的でありながらも相互に関連し合い、全体としてラムの随筆が持つ、過去への郷愁と失われたものへの哀愁、そして夢と現実の間の揺らぎを見事に音楽へと昇華させています。

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