大久保長安事件

大久保長安事件とは

大久保長安事件は、慶長18年（1613年）に発生した江戸幕府初期の粛清事件です。この事件は、徳川家康に重用された代官頭・大久保長安の死後、その不正蓄財疑惑が発覚し、長安の一族や関係者が処罰されたものです。

事件の経緯

事件の経緯は、『駿府記』や『当代記』などの記録に基づいて語られています。

長安の死と疑惑の発覚: 武田氏の遺臣から徳川家康に抜擢され、江戸幕府の代官頭として大きな権力を握っていた大久保長安は、慶長17年（1612年）頃から病に伏せ、翌慶長18年（1613年）4月25日に死去しました。長安の葬儀が急ぎ準備されましたが、家康は代官所の勘定の滞りを理由にこれを中止させました。5月6日、家康は長安の配下の者を調査した結果、長安が不正を行っていたことが発覚しました。

長安一族への処分: 激怒した家康は、長安の財産を徹底的に調べさせ、長安の息子たちに代官所の勘定を命じました。しかし、息子たちが「能力不足で役目を果たせない」と回答したため、家康は彼らを勘当し、長安が支配していた佐渡金山や石見銀山の権利を没収しました。さらに、長安の息子たち7人は、7月9日に切腹を命じられ、大久保長安家は断絶しました。長安の財産は没収され、莫大な金銀や茶道具などが駿府の蔵に収められました。

連座した人々の処分: 長安の不正に関与した者たちも処罰されました。長安の養子を迎えた老中・青山成重は改易となり、石川康長も長安と共謀して知行を隠匿したとして改易されました。また、堺奉行・米津親勝も長安と結託して不正を行ったとして流罪（後に切腹）となりました。武田信道・信正父子も事件に連座して伊豆大島に配流されました。

中村忠一の財産: 慶長14年に死去した中村忠一の財産を長安に渡したことが発覚し、徒頭の久貝正俊、大納戸の弓気多昌吉が叱責され、鵜殿重長が改易となり、後に切腹させられました。

事件の背景

大久保長安は、生前からその豪奢な生活が知られていました。鉱山巡視の際には、多数の遊女を含む大勢の従者を連れて豪華な旅をし、各地の民衆を困らせていたと伝えられています。

家康が長安のこうした振る舞いをどう捉えていたかは不明ですが、長安の能力を高く評価していたため、死後に罪を問うことにしたという説があります。また、大久保忠隣と本多正信の不仲が事件の背景にあったという説もあります。本多正信が長安の死後に家康に讒訴したことが、事件の引き金になったという見方もあります。さらに、『徳川実紀』では、長安事件は家康の意志ではなく、正信・正純父子の讒言が主因であるとされています。

関連項目

関東郡代
八王子十八人代官

参考文献

『駿府記』
『当代記』
『慶長年録』
『中臣祐範記』
『甲斐国志』
『慶長見聞書』
* 『徳川実紀』

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