堺奉行

堺奉行：近世都市堺を治めた幕府機関

堺奉行は、江戸幕府が設置した重要な行政機関の一つです。幕府直轄領である堺、和泉国、河内国の統治を担い、近世日本の経済・政治において重要な役割を果たしました。その歴史、組織、役割、そして終焉までを詳しく見ていきましょう。

堺奉行の成立と役割

中世、堺は独自の自治組織を持つ貿易都市として栄えました。織田信長が堺を掌握すると、その戦略的な重要性から、1570年、松井友閑を堺政所に任命します。これは、後の堺奉行の直接的な前身となります。豊臣秀吉時代には石田三成も堺政所を務めるなど、その重要性は早くから認識されていました。

徳川家康の時代には、1600年、成瀬正成、米津親勝、細井政成らが堺政所に任命され、その後、正式に堺奉行と改称されます。当初は複数人が奉行を務めることもありましたが、原則として一人体制となります。1614年には堺は幕府の直轄地となり、堺奉行の権限はより強固なものとなりました。

堺奉行の主な役割は、堺港に出入りする船舶や貨物の検査、港湾の防衛、そして和泉国における行政全般でした。大規模な事件は、大坂町奉行に一任されましたが、日常的な行政や治安維持は堺奉行が中心となって行っていました。 奉行の配下には与力や同心がおり、組織はしっかりと整備されていました。役高は1000石、役料は600石と、幕府の中でも重要な地位にあったことがわかります。

堺奉行と堺の変遷

1615年の大坂夏の陣で堺は焼失しましたが、長崎奉行を兼務していた長谷川藤広らの尽力により復興を果たします。この際、地割奉行風間六右衛門による町割が行われ、堺の都市構造は大きく変化しました。

しかし、大坂への経済的集中や、新大和川開削による堺港の埋没などにより、堺の港湾機能は次第に衰退していきました。それに伴い、堺奉行の権限と重要性も相対的に低下していきます。和泉・河内における管轄も刑事事件と一部の公事のみとなり、影響力は縮小していったのです。

堺奉行の廃止とその後

1696年には堺奉行は廃止され、堺は大坂町奉行の管轄下に入りました。しかし、1702年に再設置されるも、大坂町奉行の指揮下という位置づけは変わらず、人員も削減されました。その後、1711年に旧体制に戻りますが、その勢いはすでに失われつつありました。天保年間には、大坂町奉行への昇進コースの一つともなっていました。

1867年の慶応の改革により堺奉行は再び廃止され、堺は大坂町奉行の管轄に戻ります。しかし、明治維新後には、大阪裁判所が堺奉行所跡に出張所を設置し、後に堺役所となり、1868年には堺県が設置され、堺役所が県庁となりました。その後、1881年に堺県が廃止され、堺は大阪府に編入されますが、堺奉行所跡地には1944年まで堺市役所が置かれていました。

堺奉行の所在地と歴代奉行

堺奉行所の正確な初期の所在地は不明ですが、元和の町割り後は車之町東2・3丁と櫛屋町東2・3丁にまたがる場所にあったと推定されています。「殿馬場」という地名も、奉行が乗馬訓練を行っていた名残として残っています。

多くの著名な人物が堺奉行を務めました。その中には、石田三成や長谷川藤広といった歴史上著名な人物も含まれます。ここでは、長大な歴代奉行のリストは割愛しますが、彼らの政策や活動が、堺の政治、経済、社会に大きな影響を与えたことは想像に難くありません。

まとめ

堺奉行は、近世日本の行政組織の一端として、堺の都市発展に深く関わってきました。その歴史は、堺という都市の興亡と密接に関連しており、近世日本の地方行政のあり方を知る上で重要な存在です。 堺奉行の変遷を通して、近世日本の政治・経済構造の変化を読み解くことができるでしょう。

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