大友親貞

大友親貞（おおとも ちかさだ）

生涯

大友親貞は、戦国時代に活躍した武将であり、豊後国の大友氏一族に連なる人物です。しかし、その出自は明確ではなく、大友氏から肥後国の名族である菊池氏に養子に入った菊池義武の子とする説や、その兄である大友義鑑の子とする説が存在します。

「蒲池物語」には、大友宗麟の叔父である菊池左兵衛義武の嫡子、菊池八郎鎮成が今山の戦いの大将として登場しますが、菊池氏、大友氏いずれの系図にもその名は見られません。一般的には、義武の嫡男は帰国時に謀殺された高鑑とされており、親貞がどのような経緯で大友氏に戻ったのか、詳しいことはわかっていません。

そのため、親貞は大友義鑑の子である義鎮（宗麟）の従兄弟、または弟とも称されています。

今山の戦い

元亀元年（1570年）3月、大友宗麟は肥前国で勢力を拡大していた龍造寺隆信を討伐するため、親貞を総大将に任命し、6万の大軍を率いて肥前佐嘉城への侵攻を開始しました。

対する龍造寺勢はわずか5千程度の兵力であったため、佐嘉城に籠城して対抗しました。親貞は圧倒的な兵力で佐嘉城を包囲し、攻撃を仕掛けましたが、城の攻略は難航しました。筑後国の高良山まで進出していた宗麟は、戦況が進展しないことに業を煮やし、援兵を送って親貞に総攻撃を命じました。

親貞は、8月20日に佐嘉城への総攻撃を開始することを決定しましたが、その前夜に今山の本陣で勝利を祝う酒宴を開き、軍の統率が緩んでいました。この状況を察知した龍造寺氏の家臣・鍋島信生（後の直茂）は、隆信に夜襲を提案しました。

当初、隆信は夜襲に否定的でしたが、母である慶誾尼の叱咤により、この作戦を容認しました。龍造寺家の奇襲部隊は城を抜け出し、今山の敵本陣の背後に接近しました。そして、8月20日の早朝、鍋島直茂率いる奇襲部隊が今山の大友軍本陣を襲撃し、大友軍は大混乱に陥りました。

この乱戦の中で、総大将であった大友親貞は、6人がかりで突き伏せられ、龍造寺隆信の武将である成松信勝によって討ち取られました。

鍋島信生は、この勝利を記念して、鍋島家の家紋を剣花菱から大友家の杏葉へと変更したと伝えられています。

この戦いでの大友軍の死者は2千人以上に及んだとされ、この戦いは「今山の戦い」として歴史に刻まれています。大友親貞は、その出自の不明確さと、油断による悲劇的な最期から、戦国時代の武将の中でも特異な存在として知られています。

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