鍋島直茂

鍋島直茂

鍋島直茂（なべしま なおしげ）は、戦国時代から江戸時代初期にかけての武将、大名であり、肥前佐賀藩の初代藩主です。戦国大名・龍造寺隆信の義弟として、その右腕として活躍しました。

生涯

龍造寺隆信の右腕として

天文7年（1538年）、鍋島清房の次男として生まれた直茂は、幼少の頃に小城郡の千葉胤連の養子となります。しかし、龍造寺氏と少弐氏の対立により、実家に戻ることになります。その後、龍造寺隆信が家督を継ぐと、直茂は隆信の従弟でありながら義弟という立場になり、その才能を高く評価され、厚い信任を受けるようになりました。龍造寺氏の勢力拡大に大きく貢献し、宿敵であった少弐氏を滅亡に追い込みました。

今山の戦いでの活躍

永禄12年（1569年）、大友宗麟が侵攻してくると、直茂は隆信に進言し、籠城策をとらせると同時に、毛利氏に大友領への侵攻を要請しました。元亀元年（1570年）の今山の戦いでは、夜襲を主張し、自ら夜襲隊を率いて大友軍を撃破。この勝利を記念して、鍋島家の家紋を剣花菱から大友家の杏葉へと変更しました。この戦いを機に、直茂は龍造寺家内での存在感を増していきました。

隆信の死とその後

天正3年（1575年）には少弐氏の残党を全て滅ぼし、天正6年（1578年）には肥前南部の有馬氏や大村氏らを屈服させるなど、数々の武功を上げました。隆信が隠居し、嫡男の政家が家督を継ぐと、直茂はその後見人を任されます。天正9年（1581年）には、島津氏と通謀した蒲池鎮漣を誅殺し、筑後国の国政を担当することになります。しかし、隆信は次第に直茂を疎むようになり、筑後へ回したとも言われています。天正12年（1584年）の沖田畷の戦いで隆信が戦死すると、直茂は自害しようとしましたが、家臣に止められ、政家を補佐して勢力挽回に尽力しました。島津氏からの隆信の首の返還を拒否し、強硬な態度を示したことが、その後の講和交渉を有利に進める要因となりました。

豊臣秀吉との関係

龍造寺氏は一時的に島津氏に服属しましたが、直茂は早くから豊臣秀吉に接近し、九州征伐を促しました。秀吉軍が九州に迫ると、直ちに島津氏と手を切り、立花宗茂の母親と妹を救出。島津攻めに貢献し、秀吉から高く評価されました。その結果、龍造寺政家は肥前国7郡を安堵されましたが、実質的な国政は直茂が担うこととなりました。また、秀吉からは豊臣姓を下賜され、龍造寺領内での支配権を確立させていきました。

朝鮮出兵と関ヶ原の戦い

朝鮮出兵では、龍造寺家臣団を率いて加藤清正の部隊に所属しました。この出兵を通じて、家臣団の直茂への信頼は一層深まりました。関ヶ原の戦いでは、当初西軍に与した息子・勝茂を戦線から離脱させ、徳川家康に恭順の意を示しました。戦後、その功績が認められ、龍造寺家の肥前国佐賀の本領は安堵されました。

鍋島氏佐賀藩の成立

江戸時代に入り、龍造寺高房が龍造寺氏の実権回復を試みましたが、幕府は直茂・勝茂親子への禅譲を認めました。これにより、勝茂は佐賀藩主となり、父の直茂はその後見として藩政を総覧しました。直茂は、龍造寺氏への敬意を示しつつも、その影響力を弱める政策を推進。また、検地を実施して佐賀藩の石高を確定させました。直茂自身は藩主の座に就くことはありませんでしたが、初代藩主である勝茂を支え、佐賀藩の基礎を築き上げたことから、藩祖と称えられています。

人物・逸話

龍造寺隆信とは義兄弟の間柄で、隆信を諫めることが多かったとされます。当初は隆信と親密な関係でしたが、晩年の隆信が酒色に溺れるようになると、疎まれて遠ざけられたと言われています。また、戦の際には、先陣の敗北を静観し、自らが助勢することで手柄を立てるなど、計算高い一面も持っていたと伝えられています。秀吉からは「知恵も勇気もあるが、大器（覇気）が足りない」と評されたと言われています。

その他

直茂は、龍造寺氏の家臣や親族、さらに自身の家臣団に偏諱を与え、自身の権力を強固にしました。また、彼を題材にしたドラマや小説も多く、その生涯は広く知られています。

主な偏諱を賜った人物

龍造寺系：龍造寺安良、龍造寺信周、龍造寺長信、龍造寺家晴、多久安順、後藤家信
親族衆：鍋島信房（直茂庶兄）、鍋島茂里（石井信忠の子で直茂の養子）、鍋島胤信（直茂義弟）、神代家良（直茂の甥で神代長良の養子）
鍋島三生：石井生札、下村生運、鍋島生三（直茂の従兄弟・清虎の子とされる）、藤島生益
その他家臣：成富茂安、石井茂成、石井茂利、石井茂清、鍋島茂賢（茂里の実弟、初め深堀姓）、江副茂久、中野清明、久納茂俊

関連作品

テレビドラマ
『日曜史劇 脈』「火を作る人々」（KBS、1977年）演：キム・ソンギョム

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