龍造寺氏

龍造寺氏：肥前を揺るがした戦国大名の興亡

龍造寺氏は、戦国時代の九州北西部を支配した戦国大名です。肥前国（現在の佐賀県）東部を拠点とした国人から成長し、一時は九州を席巻する勢力となりますが、短命に終わりました。本稿では、龍造寺氏の起源から滅亡、そしてその後の血筋までを詳細にたどります。

出自と家紋

龍造寺氏の起源は諸説ありますが、藤原秀郷の末裔である藤原季善が、肥前国佐賀郡龍造寺村に移り住み、地名から龍造寺姓を名乗ったとする説が有力です。その後、数家に分かれましたが、室町時代末期から戦国時代にかけては水ケ江龍造寺家が勢力を伸ばしました。

龍造寺氏の家紋は、「日足」「剣花菱」「杏葉」の三つが知られています。特に珍しい日足紋は、太陽光線を図案化したもので、九州北部で多く見られました。杏葉紋は大友氏の家紋であり、龍造寺隆信は今山の戦いで大友氏を破った後、戦勝記念として杏葉紋を用いるようになりました。

少弐氏からの独立と再興

当初、九州千葉氏、そして少弐氏の被官であった龍造寺氏は、家兼の代に自立への道を歩み始めます。家兼は田手畷の戦いで大内氏を破り、天文4年（1535年）には少弐氏を裏切り、大内義隆の庇護の下で独立を宣言しました。しかし、少弐氏重臣の反撃により一時的に勢力を失います。

家兼は筑後国の蒲池鑑盛の保護を受け、再起を果たします。天文15年（1546年）、家兼は馬場頼周を討ち、龍造寺氏を再興しました。その後、家督は曾孫の隆信に継承されます。隆信もまた一族の争いによって肥前を追われ、蒲池鑑盛の保護を受け、再起の機会を待ちました。

戦国大名としての隆盛と崩壊

隆信の時代、龍造寺氏は肥前を制圧し、北九州に勢力を拡大しました。さらに、大友氏が耳川の戦いで島津氏に大敗すると、その混乱に乗じて筑後へ侵攻。九州北東の雄であった大友氏をも圧倒する勢力となります。しかし、九州中央部への進出を狙い、蒲池氏を攻めた際に恩ある蒲池鎮漣を裏切り殺害したことで、筑後国人の反乱を招き、次第に勢力を弱めていきました。天正12年（1584年）、沖田畷の戦いで島津氏に敗れ、隆信は戦死しました。

豊臣秀吉への臣従と鍋島氏の台頭

隆信死後、家督を継いだ政家は豊臣秀吉から肥前国を安堵されましたが、実権は鍋島直茂が掌握していきました。天正16年（1588年）、政家は鍋島直茂に領国の実権を譲り隠居。慶長12年（1607年）、政家、高房の相次ぐ死により龍造寺氏は断絶し、鍋島氏が肥前の支配を完全に掌握しました。

龍造寺氏のその後

龍造寺氏本家は断絶しましたが、庶家である龍造寺四家（後多久氏、諫早氏、武雄鍋島氏、須古鍋島家）は佐賀藩に仕えました。また、高房の子である伯庵は鍋島氏による乗っ取りを幕府に訴えましたが失敗し、会津藩預かりとなりました。龍造寺一族は、会津藩、白河藩、大和郡山藩などで藩士として存続しました。

系譜と主要家臣団

龍造寺氏の系譜は複雑で、多くの支族が存在しました。主要家臣団には鍋島氏をはじめ、小河氏、木下氏、百武氏など多くの有力な武将が名を連ねています。龍造寺氏の興亡は、これらの家臣団の動向とも密接に関係していました。また、近隣の蒲池氏、田尻氏、少弐氏、大友氏、島津氏などとも複雑な関係を築き、勢力争いを繰り広げました。

龍造寺氏の歴史は、戦国時代の九州における激しい権力闘争と、大名家の興亡というドラマを象徴的に物語っています。その栄枯盛衰は、現代にいたるまで人々の記憶に刻まれています。

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