大和いも

大和いもについて

大和いも（やまと芋）は、ヤマノイモ科のつる性多年草で、奈良県在来のツクネイモの品種です。奈良県では古くから栽培されており、伝統野菜「大和野菜」の一つとして認定されています。関東地方で「やまと芋」と呼ばれるイチョウイモとは異なる品種で、奈良県産のものは、粘り気が非常に強いげんこつ型の黒皮ツクネイモです。

歴史

大和いもを含むツクネイモ群は、大陸から渡来したナガイモの一種と考えられています。日本原産のヤマノイモとは別の種です。古い記録では、ヤマノイモとナガイモが混同され「薯蕷」という言葉で使われていました。ツクネイモの名前が最初に登場するのは1654年頃、栽培記録は1681年～1684年頃の文献に見られます。17世紀以前には日本に渡来していたと推測されています。

奈良と「薯蕷」に関する記録としては、以下のようなものがあります。

『日本書紀』には、武烈天皇が「暑預(うも)を掘らしむ」と記述されています。
『正倉院文書』には、「漿料、栗子、薯預」などが記述されています（760年）。
* 『東大寺文書』には、「暑預」を含む献上品が記述されています（1176年）。

1533年から1650年まで記された茶会記『松屋会記』には、「山ノイモ」や「スイモノ山ノイモ」の記述があり、これは自然薯であると考えられています。

江戸時代の文献には「大和イモ」「大和芋」の名が見られますが、この頃は「仏掌薯（つくねいも）」を指していました。1924年の文献でも「大和蕷薯 一名仏掌薯」とあり、当時も「仏掌薯（つくねいも）」が「大和いも」と呼ばれていたことが分かります。

1881-82年頃の記録には、「葛上郡組合村櫛羅　芋二万貫目」とあり、これが現在の「大和いも」であると考えられます。1911年には、奈良県農事試験場が品種試験を開始し、黒皮ツクネの特徴が記録されています。1919年にはヤマトイモの純系が育成されました。

一方で、明治中期に丹波から種芋が持ち込まれたという説もあります。1933年には純系「やまといも」の育成が行われ、1935年には試験地が設けられ、品種改良試験が進められました。これにより、生産が拡大し、「やまといも」の名声が高まりました。1938年には、栽培に関する書籍も著されました。

2005年10月5日、げんこつ型黒皮ツクネイモの「大和いも」は「大和野菜」に認定されました。

特徴

大和いもは、球形の芋であるツクネイモ群に属し、表皮が黒いのが特徴です。白いものは伊勢いもと呼ばれます。形が整っていて凹凸が少なく、品質に優れています。肉質は緻密で、ナガイモの中では最も粘りが強く、濃厚な食感が特徴です。すりおろしても変色しにくいのも特徴です。

産地

大和いもは、土質を選び乾燥を嫌うため栽培が難しく、産地は限られています。現在は、奈良県御所市の葛城山麓を中心に栽培され、「櫛羅（くじら）いも」とも呼ばれています。その他、天理市などでも栽培されています。

利用法

大和いもは、その優れた品質から高級食材として珍重され、和菓子の原料にも用いられます。すりおろしてとろろごはんにしたり、汁物の具にしたり、揚げ物にするなど様々な料理に活用できます。地元では、すりおろした大和いもに卵と味噌汁を加えた「とろろ汁」がよく食されます。また、大和いもを鍋の出汁で伸ばし、具材に絡めて食べる「山芋鍋」も人気です。薄切りにして茹でてから田楽味噌を付け、焼くとまた違った味わいを楽しめます。

大和いもは、親芋の下に子芋ができる姿から「めでたいいも」や「孝行いも」とも呼ばれ、おせち料理の煮物にも使われます。

その他

大和いもは「山薬」とも呼ばれ、胃腸の働きを整える効果も期待されています。

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