大地讃頌事件

大地讃頌事件について

『大地讃頌事件』は、ジャズ・バンドPE'Zが楽曲「大地讃頌」を編曲し、CDとして発売したことから生じた著作権に関する争いを指します。著作権者である作曲家の佐藤眞氏が、PE'Zの編曲が自身の著作権を侵害するとして訴えを起こしました。

大地讃頌とは

「大地讃頌」は、大木惇夫が作詞し、佐藤眞が作曲したカンタータ『土の歌』の最終曲です。この楽曲は、1983年に初版、2001年に改訂版として出版されています。合唱曲として非常に人気があり、多くの人々に愛されています。PE'Zのメンバーは中学生時代にこの曲に触れ、深い感銘を受けたことから、独自のジャズアレンジを施した演奏を行ってきました。

2003年11月には、エミーレコード（現ユニバーサル ミュージック）が「大地讃頌」を表題曲とするシングル、および同曲を収録したアルバム『極月-KIWAMARI ZUKI-』を発売しました。これに際し、著作権は日本音楽著作権協会によって適切に管理され、録音使用料も支払われました。

訴訟とその背景

佐藤は、PE'Zの編曲が自身の「編曲権と同一性保持権」を侵していると主張し、2004年2月18日に東京地方裁判所に対してCDの販売停止と演奏禁止の仮処分を申し立てました。佐藤は、この事前に行った通告にもかかわらず、PE'Zが楽曲を改編して演奏することに反対していました。

一方、東芝EMIはPE'Zの編曲が原曲とは異なる楽曲に改型されたわけではないと主張し、演奏者にはアレンジの自由があると考えました。音楽業界では、原曲と異なる編曲が行われても、編曲権者からの許可が必要ではないという認識が一般的でした。しかし、著作権に対する理解が不足していたことから、東芝EMIは意外にも困惑しました。

この事例は日本音楽著作権協会にとっても珍しいものであり、同協会は上演権や録音権を行使するために必要な手続きを経て、自動的に利用者に許可を出す立場にあるため、佐藤の抗議に戸惑いを隠せなかったのです。

判決に至って

結果的に、東芝EMIは訴訟を回避し、PE'Zの「大地讃頌」が収録されたCDの自主的な出荷停止を決定しました。アルバム『極月-KIWAMARI ZUKI-』の「大地讃頌」は、他の未収録楽曲に差し替えられた後、2004年に再発売されることとなりました。

この事件は、原曲とPE'Zのカバーとの間において、拍子や構成の変化があったこともあり、著作権の適用について議論を引き起こしました。特に、著作権法第20条や第27条が争点となり得ることが示唆されました。

音楽業界の反応

本事例については、支持者間での意見が分かれました。佐藤を支持する声とPE'Z支持者からは、裁判で明確な結論を求める声が挙がりました。音楽の権利に関する概念がより明文化されることが望まれていた中で、東芝EMIが争いを避けた決断は、やむを得ないものとして評価されています。

最後に、音楽における著作権問題は、今後さらに注目されていくべきテーマであり、この事件はその一例として記憶されることになるでしょう。

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