大木惇夫

大木 惇夫 (おおき あつお)

大木惇夫は1895年に広島県で生まれ、1977年に他界した日本の詩人、翻訳者、作詞家です。本名は軍一で、1932年まで「篤夫」という名で活動していました。彼は太平洋戦争中に戦争詩で名を馳せた一方、児童文学や合唱曲、さらには歌謡曲や軍歌、校歌などさまざまなジャンルで作詞を手掛けました。特に「大地讃頌」などの合唱曲は今も広く親しまれています。

経歴とはじまり

大木は広島市の裕福な呉服商の家に生まれましたが、彼が少年の頃には家計は困窮し、貧しい生活の中で育ちました。この影響で、文学への関心が芽生え、『アラビアン・ナイト』や巖谷小波の『世界お伽噺』などを読んで文学を志すようになります。学生時代の広島商業学校では与謝野晶子や北原白秋の影響を受けて短歌を作り始めました。

文壇デビュー

学校卒業後は銀行に就職しましたが、文学への情熱が強く、20歳で上京します。編集部や博文館で働きながら、創作活動を続け、詩作にも取り組むようになりました。その後、小田原に引っ越し、北原白秋と知り合うきっかけを得ます。1922年に彼の詩が『詩と音楽』で初めて発表され、詩人としての道を歩み始めました。

代表作と歌謡曲

1924年には著書『基督の生涯』の翻訳が大ヒットし、初の詩集『風・光・木の葉』も出版されました。このような successesから彼は文壇での地位を高め、1930年代には歌謡曲の作詞も手がけるようになり、特に東海林太郎の「国境の町」は大ヒットを記録しました。その他にも、「夜明けの唄」や「港の恋唄」などの作品があります。

戦中の活動

1941年、太平洋戦争が勃発すると、大木は海軍に徴用されジャワ作戦に参加しました。この時の経験は彼の詩に大きな影響を与え、戦争詩集『海原にありて歌へる』が出版されました。これが日本の戦争文学の中でも高く評価され、他の多くの作品が依頼されることとなります。

戦後の困難

戦後、大木は戦時中の愛国詩により非難の対象となり、文壇から疎外される辛い時期を経験します。彼を支持していた文学者たちも彼から距離を置き、数年間は窮迫した生活を強いられましたが、孤立しながらも詩作を続けました。詩作の傍ら、校歌の作詞なども行いながら作家活動を続けます。

私生活と影響

大木の私生活では、ユニークな性格が周囲に知られています。たとえば、会話中に喜びを表現するために相手に抱きつくなどの癖があったとされています。また、彼の作品の中には、俳優の森繁久彌が大変気に入っていた「戦友別盃の歌」などもあり、演出家の久世光彦によってドラマ化されたこともあります。

結論

大木惇夫は多様なジャンルで創作を行い、特に詩や作詞の分野で日本の文化に貢献しました。彼の作品は今なお多くの人々に受け継がれ、愛されています。彼の文学的功績を評価することは、戦争や社会の変動を背景に持つ豊かな日本文学の理解を深めるためにも重要なことと言えるでしょう。

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