土の歌

カンタータ『土の歌』の紹介

混声合唱とオーケストラのために作られたカンタータ『土の歌』は、1962年に大木惇夫（本名：大木軍一）が詩を、佐藤眞が音楽を手がけた作品です。この楽曲は、日本ビクターからの委嘱により生まれました。初演は指揮者の岩城宏之を迎え、東京混声合唱団とNHK交響楽団が演奏を担いました。

楽曲の概要

『土の歌』は、七つの楽章から構成されており、特に最終楽章「大地讃頌」は多くの学校で合唱コンクールや卒業式などにおいて歌われています。この楽章は、教育の現場で広く知られ、様々な楽譜に収録され続けています。1980年代初頭には『新しい私たちの合唱曲集』に登場し、合唱の定番となりました。

この作品はまた、男声合唱団によってもアレンジされており、2008年には早稲田大学グリークラブの依頼によるバージョンが作られました。大木惇夫の創作意図や音楽的成果は多くの人々に感動を与えています。たとえ初演後に改訂が行われたとしても、その本質は変わらないものです。

各楽章の構成

『土の歌』の第1楽章「農夫と土」では、ア長調で自然の恵みや土への感謝が表現されています。第2楽章「祖国の土」では、人間の生まれ、そして土に還るというテーマに基づき、行進曲風のリズムで進行します。第3楽章「死の灰」では、ヘ短調により原爆の恐怖とそれに伴う科学の負の側面が描かれています。

続く第4楽章「もぐらもち」も原爆を扱いつつ、モグラを用いた皮肉的な視点が注入されています。この楽章ではテノールのソロも登場し、聴き手に深い印象を与えます。第5楽章「天地の怒り」では自然災害と人間の悪行に焦点を当て、ホ短調でしっかりと訴えかけます。第6楽章「地上の祈り」ではト長調で、大地への思いと平和を願う祈りが盛り込まれています。

そして最後の第7楽章「大地讃頌」は、このカンタータを締めくくる誇大な賛歌となっています。

楽曲にまつわるエピソード

この楽曲の制作過程にはいくつかの逸話があります。例えば、当初は小澤征爾氏が指揮を予定していたNHK交響楽団での録音が実現しなかったため、岩城宏之に変更されました。また、1970年には、ピアノ伴奏版混声四部が音楽雑誌の付録として発表され、後に合本として流通するに至りました。

1971年には杉並混声合唱団の定期演奏会で全曲が披露され、その後は多くの学校でも頻繁に演奏されるようになりました。このように、『土の歌』は時代とともにその価値を認められ、愛され続けています。

「大地讃頌」には特に注目すべきエピソードがあり、2003年にはPE'Zが独自のアレンジでカバーしたものの、作曲者によって編曲権が侵犯されたとして法的な争いが起こりました。最終的には売上停止となり、その後は改めて作品が再発表されています。

このように、カンタータ『土の歌』は、合唱音楽の一つの重要な位置を占め、多くの人々に影響を与え続けている品格のある作品です。

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