大型筐体ゲーム

大型筐体ゲームとは

大型筐体ゲームは、主に業務用としてゲームセンターなどに設置されるアーケードゲームの中でも、ゲームの内容や操作性を最大限に引き出すために、特別に設計された大規模な筐体を採用しているものを指します。一般的なアーケードゲームが、汎用性の高い小型の筐体に様々なソフトウェアを組み込んで提供されるのとは異なり、大型筐体ゲームはそのゲーム専用に作られた独自のハードウェアと外観を備えている点が特徴です。

特徴的なプレイ体験と体感ゲームの時代

これらのゲームの大きな魅力は、そのスケール感と没入感にあります。単に画面を見るだけでなく、プレイヤーは筐体と一体となってプレイすることが求められる場合が多く、座席が筐体の一部となっていたり、立った状態で全身を使って操作したりします。例えば、レースゲームでは実際の自動車やバイクの運転席を模したコックピット、フライトゲームでは飛行機の操縦席のような筐体が用意され、視覚情報に加えて体感的な要素が加わることで、よりリアルな感覚を味わうことができます。

特に1980年代後半から1990年代にかけて一世を風靡した「体感ゲーム」は、大型筐体ゲームの代表的な存在です。これらのゲームでは、筐体が電動モーターや油圧システムによって激しく揺れ動いたり、プレイヤーが特定の姿勢で操作する特殊なコントローラーが使用されたりしました。中には、プレイ中に風を発生させてスピード感を演出するなど、五感に訴えかける工夫が凝らされたものもあり、プレイヤーは全身でゲームの世界を体感することができました。

設置環境とビジネスモデル

しかし、大型体感ゲームはその規模ゆえに設置場所が限られ、一般的なアーケードゲーム機の数倍に及ぶ消費電力を消費することもありました。このため、大型体感ゲームが楽しめるのは、主に都市部の大型ゲームセンターや特別なアミューズメント施設に限られていました。また、過度に激しく動く筐体は乗り物酔いを誘発する場合もあり（例としてSega R-360などが挙げられます）、その派手な動きがゲームセンターの他の利用客の注目を集める一方で、必ずしも高い稼働率や収益に繋がらず、徐々に数を減らしていきました。それでも、一部には熱狂的なファンが存在し、設置店舗を探し求めて遠方から訪れる人も見られました。

現在では、かつてのような大掛かりな可動機構を持つものは少なくなったものの、大型筐体ゲームは依然としてリリースされています。特に、風営法の規制対象外となることが多いレースゲームなどは安定した需要があり、定期的に新作が登場しています。また、1980年代にはレーザーディスクを使った大型筐体ゲームも登場しましたが、制作や運用のコストが高かったため、主流にはなりませんでした。

家庭用ゲームとの違いと近年の傾向

大型筐体ゲームは、その物理的なサイズや専用コントローラーゆえに、家庭用ゲーム機への移植が難しい、あるいは移植されても操作方法が大幅に簡略化される傾向にあります。この「ゲームセンターでしか体験できない」という希少性が、大型筐体ゲーム、ひいてはアーケードゲームの魅力の一つとなっています。

近年では、ゲームメーカーはゲーム内容だけでなく、筐体のデザインにも趣向を凝らし、視覚的なインパクトでプレイヤーの関心を惹きつけようとしています。大画面でのプレイが臨場感を高めるガンシューティングゲームなどに加え、一般的なビデオゲームでも大型のプロジェクションモニターを採用し、専用筐体に収められる例が見られます。ただし、特定のゲーム専用となる筐体の導入は、ゲームセンター運営者にとって初期投資や維持管理の面で大きな負担となる課題も存在します。

筐体の構造とメンテナンス

これらの大型筐体の外装の多くは、製造コストを抑えるために、化粧板加工された合板（木材）が主に使用されています。プレイヤーが直接操作する部分や前面パネルなどには合成樹脂製のパーツが用いられています。ガラス繊維強化樹脂や金属パネルなど、より強度や軽量化に優れた素材を使うとコストが高くなるため、木材が選ばれる傾向にあり、結果として同体積の一般的な筐体よりも重量が重くなる傾向があります。プレイヤーが強い力を加えることを想定し、構造上の要所には金属製の補強パーツが組み込まれています。

特徴的な操作装置（ハンドル、ペダルなど）は、店舗スタッフが容易に交換修理できるよう、アッセンブリ（一式になった部品）として設計されていることが多いです。内部ではコネクターによって接続されており、専用のサービスパネルを開ければ、ドライバーなどの簡単な工具で着脱できるようになっています。ボタンやコイン投入口などは、汎用筐体と共通の部品が使われています。人気ゲームには続編やバージョンアップが存在するため、ゲームタイトルを示す看板やパネルは、交換が容易な構造になっているものが多く見られます。

安全性への配慮

過去の激しく揺れ動く体感ゲームの中には、乗り物酔いを起こすほどダイナミックに動作するものもありました。これらのゲームでは、プレイヤーの安全性が特に重視され、筐体から落下しないように自動車のようなシートベルトが装備されていました。また、大きく動作するタイプの筐体では、プレイ中に第三者が不用意に接近した場合に危険がないよう、周囲に設置された安全センサーが反応して筐体の動きを一時的に停止させる機能も備えられていました。

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