大塚初重

大塚初重：戦火から考古学へ―日本の古代史を解き明かした生涯

大塚初重氏（1926年～2022年）は、日本の考古学界に多大な貢献を果たした著名な学者です。弥生時代や古墳時代を専門とし、数々の重要な遺跡の発掘調査に携わりました。その業績は、日本の古代史研究に大きな足跡を残しています。本稿では、大塚氏の波瀾万丈の人生と、考古学者としての輝かしい功績を詳しく探ります。

戦争体験と歴史への目覚め

1926年東京に生まれた大塚氏は、第二次世界大戦末期、海軍兵として輸送船に乗務していました。1945年、済州島沖でアメリカ潜水艦の雷撃を受け、沈没の危機に瀕します。炎上する船から九死に一生を得た経験は、氏のその後の人生観、ひいては考古学への道を決定付ける転機となりました。この時の体験を通して、従来の皇国史観に疑問を抱き、歴史を深く探求するきっかけを得たのです。戦後、特許庁に勤務しながら、明治大学で考古学を学びました。

学者としての歩みと主要な業績

明治大学大学院を修了後、同大学教授として長年教鞭を執り、後進の育成にも尽力しました。その間、岩宿遺跡、登呂遺跡、三昧塚古墳など、日本を代表する数々の遺跡の発掘調査にリーダーシップを発揮しました。これらの調査は、日本の古代社会の理解を深める上で極めて重要な成果を上げました。

特に、登呂遺跡の発掘調査は、弥生時代の水田農業の存在を明確に示す重要な発見として知られており、大塚氏は中心的な役割を果たしました。綿貫観音山古墳の発掘調査でも重要な発見を残し、日本の古代史研究に貢献しました。

大塚氏の研究対象は、弥生時代から古墳時代まで多岐に渡り、その業績は日本[[考古学協会]]会長、日本学術会議会員といった要職への就任にも繋がりました。さらに、山梨県立考古博物館館長、千葉県や成田市文化財審議委員なども歴任し、考古学研究の推進と普及に貢献しました。

教育者としての姿勢と多様な活動

大学教授としての活動以外にも、大塚氏は精力的に講演活動を行い、一般の人々にも考古学の面白さを伝えました。明治大学リバティアカデミーでの定期講演や、カルチャーセンター、全国各地の博物館での講演会など、幅広い層に考古学の魅力を伝えていました。

2014年からは淑徳大学客員教授も務め、考古学研究と教育に携わり続けました。晩年まで、考古学への情熱を失わず、その知識と経験を惜しみなく若い世代に伝承していきました。

多くの著書と共著

大塚氏は、数多くの著書や共著を発表し、その著作は考古学研究の第一線で高い評価を得ています。『弥生時代の考古学』、『考古学から見た日本人』、『邪馬台国をとらえなおす』など、専門性の高い内容から、一般向けに分かりやすく書かれたものまで、幅広く執筆活動を行っています。これらの著作は、考古学研究の進歩に貢献すると同時に、多くの読者に古代日本の歴史への関心を高める役割を果たしました。

まとめ

大塚初重氏は、戦争の体験から歴史への探求心を抱き、日本の考古学界を牽引する第一人者として活躍しました。数々の発掘調査への参加、後進の育成、そして一般への啓蒙活動を通して、日本の古代史研究に計り知れない貢献を果たしました。その功績は、未来の考古学者たちに大きな影響を与え続けるでしょう。大塚氏の遺した足跡は、日本の考古学、そして歴史研究における貴重な財産です。

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