大山寺縁起 (伯耆国)

大山寺縁起

大山寺縁起（だいせんじえんぎ）は、鳥取県西伯郡大山町に位置する大山寺の成立過程や信仰の実践を記した文書です。特に鎌倉時代の末期に形成された縁起書と、室町時代前期に作成された縁起絵巻に大別されます。この文書は、日本の宗教的かつ文化的な背景を知る上で貴重な史料と位置づけられています。

大山寺縁起の成立と内容

大山寺縁起の成立時期は、正中2年（1325年）から元徳元年（1330年）にかけてとされています。この縁起書は、一般的に言われるよりも早い時期に成立したと考えられ、当時の大山寺の信仰状況を反映しています。作者は不詳ですが、大山寺中門院の関係者であった可能性が高いため、その内容には中門院寄りの記述が含まれています。

この縁起書は43話からなる説話を上巻21話、下巻22話に分けて収めています。これらの物語には、大山信仰やその背後にある文化的側面が色濃く表現されており、特に地域の人々がこの寺にどのように信仰を寄せていたかの一端を理解する手助けとなります。原本は現在、洞明院に詞書のみが伝わっており、写本は幕末期に作成されたと潮流されています。

大山寺縁起絵巻の重要性

一方、室町時代前期に成立した大山寺縁起絵巻は、応永5年（1398年）に作成されたもので、作者は前豊前入道了阿（りょうあ）に擔がれている全10巻から成り立っています。この絵巻は、宗教行事や信仰のビジュアル表現が豊かに描かれており、日本の民俗や宗教史の研究においても高く評価されています。

残念ながら、原本は1928年に大山寺の火災で焼失しましたが、現在でも東京国立博物館や東京大学史料編纂所に模写本が保存されています。その絵は時代背景を反映した生々しさを持ち、特に牛耕や田植の場面が描かれていることから、当時の農業の様子や人々の生活が伺える貴重な資料です。絵の粗さから地方の画師によって制作されたとされており、考古学や民俗学における資料としての重要性が認識されています。

結論

大山寺縁起とその絵巻は、日本の宗教的な側面や地域文化を理解する上で欠かせない史料です。特に大山信仰の実践や、当時の人々の生活を映し出す内容は、文化遺産としての価値があり、研究対象としても引き続き関心が寄せられています。今後も、デジタル技術を用いた復元など新たな試みが期待され、さらなる研究が行われていくことでしょう。

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