大山美信

大山美信：福島が生んだ現代美術家の軌跡

大山美信（1947-2013）は、福島県田村郡出身の洋画家にして現代美術家です。抽象絵画の巨匠、村井正誠に師事し、独自の芸術世界を築き上げました。文化学院芸術専門学校校長、一陽会理事といった要職を務め、多方面で才能を発揮した彼の生涯と作品を紐解きます。

才能を開花させた初期から中堅時代

1968年、大山美信は上京し、文化学院美術科に入学。村井正誠氏に師事したことで、彼の芸術家としての基礎が固まりました。1970年の卒業後、精力的に活動を開始し、1975年には一陽会会員に推挙されます。その後も、福島県美術博物館（現福島県文化センター）への作品買い上げや小説への挿絵提供など、着実に実績を重ねていきました。

1980年には福島県総合美術展覧会の審査員も務め、美術界における彼の存在感は増していきました。1983年には母校である文化学院美術科の講師に就任。さらに、1985年には文化学院芸術専門学校の設立にも参画し、開校当初から講師として後進の指導にもあたりました。

一陽会での活動も盛んで、委員、理事を歴任。数々の展覧会や個展に参加し、高い評価を得ていました。1973年には銀座で個展を開催し、以降も精力的に個展を開いています。また、現代美術選抜展への招待や、現代日本美術展への出品など、彼の作品は広く認められていきました。

代表作「偶景シリーズ」と晩年の活動

大山美信を代表する作品群として知られるのが「偶景シリーズ」です。BODY、ハート、ザザンポなど、印象的なタイトルの作品が多数含まれています。このシリーズは、彼の独特の感性と表現力を象徴するものであり、多くの鑑賞者を魅了しました。

1990年には一陽会を退会し、日本美術家連盟会員となります。1996年には文化学院芸術専門学校の校長に就任し、12年間校長と講師を兼任。教育者としても大きな役割を果たしました。

2008年には、弟の住む長野県軽井沢町に移住。東京での活動を一旦終え、絵画制作に専念する時間を持ちました。軽井沢での制作活動は、彼の晩年の活動に新たな息吹を与えたと言えるでしょう。

数々の展覧会と作品所蔵先

大山美信は、数多くの展覧会に参加し、個展も多数開催しました。東京のみならず、福島、埼玉、京都など、各地で作品を発表し、高い評価を得てきました。受賞歴も華々しく、ナムラ賞、クサカベ賞、美術協会賞など、数々の賞を受賞しています。また、安田火災美術財団奨励賞を受賞したことも、彼の芸術性を証明するものです。

彼の作品は、福島県立美術館や(株)三笠會館、福島県立船引高等学校など、様々な場所で所蔵されています。これらの事実は、彼の作品が美術界に広く認められ、高く評価されていることを示しています。

創作への情熱を貫いた生涯

2013年、軽井沢の自宅で66歳で亡くなりました。彼の死は、美術界に大きな損失をもたらしました。しかし、彼の作品は、これからも多くの人々に感動と刺激を与え続けるでしょう。

大山美信は、長年に渡り、創作への情熱を貫き通した真の芸術家でした。彼の作品は、時代を超えて人々の心に響き続けることでしょう。彼の生きた証である作品群は、未来の美術史に重要な足跡を残すものと言えるでしょう。

参考文献

『三彩Ｎｏ．530 1991年11月号』三彩社
『BODY偶景シリーズ1　個展カタログ』円錐社 1995年　
『BODY偶景シリーズ2　個展カタログ』円錐社1995年
『BODY偶景シリーズ3　大山美信作品集　OHYAMA,Bishin』 (株)同美印刷 1997年
『日経アート 1997年 9月号「21世紀 作家図鑑」』
ロラン・バルト著／沢崎浩平／萩原芳子／訳『偶景』みすず書房2001年

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