大島清次

大島清次（1924年11月13日 - 2006年11月23日）は、昭和から平成にかけての日本の美術史家、美術評論家として、その足跡を美術史に刻みました。

栃木県宇都宮市に生まれた大島は、1951年に早稲田大学文学部を卒業後、教育者としてのキャリアをスタートさせました。栃木県立高等学校教諭、法政大学文学部講師を経て、1972年には栃木県立美術館副館長に就任、1981年には同館長へと昇進しました。その後、1986年には世田谷美術館長となり、2005年までその職を務めました。美術館運営における彼の貢献は非常に大きく、特に世田谷美術館の発展に尽力しました。

大島の専門は、フランス絵画史とジャポニスムの研究でした。特にジャポニスム研究においては、その先駆者として、本格的な研究業績を数多く残しました。ジャポニスムとは、19世紀後半に西洋美術が日本の美術から受けた影響のことであり、大島は、この分野における研究を深め、その重要性を広く知らしめました。

さらに、大島は日本美術評論家連盟の常任委員としても活動し、美術界の発展に貢献しました。1982年には、美術館連絡協議会の設立に尽力するなど、美術界の組織化にも積極的に関わりました。これらの活動は、日本の美術界の基盤を築く上で重要な役割を果たしました。

大島は、西洋近代美術を中心に、多数の翻訳、著述、評論活動を行いました。その著作は、美術史の研究者だけでなく、美術愛好家にも広く読まれています。

主な著書

『ドガ　美術家評伝双書』 岩崎美術社、1970年
『ジャポニスム：印象派と浮世絵の周辺』 美術公論社、1980年／講談社学術文庫（稲賀繁美解説）、1992年
『美術館とは何か』 青英舎、1995年
『「私」の問題：人間的とは何か』 青英舎、2001年

主な訳書

ジャン・ヴェルクテール『古代エジプト』白水社・文庫クセジュ、1960年
フランソワ・フォスカ『文学者と美術批評：ディドロからヴァレリーへ』美術出版社・美術名著選書、1962年
ピエール・フランカステル『絵画と社会』岩崎美術社、1968年、新版1991年
サミュエル・ビング編『藝術の日本：1888～1891』美術公論社、1981年、共訳
アンドレー・ケイガン『モダン・マスターズ・シリーズ　マルク・シャガール』美術出版社、1990年
ロベール・レー『BSSギャラリー　世界の巨匠　ドーミエ』美術出版社、1991年
フレデリク・ハート『BSSギャラリー　世界の巨匠　ミケランジェロ』美術出版社、1992年

主な編・解題

『双書・美術の泉　ロートレックのデッサン』岩崎美術社、1970年
『世界の名画3　アングルとドラクロワ：新古典派とロマン派』中央公論社、1972年、新版1994年。分担解説
『日本の名画12　青木繁』中央公論社、1975年
『世界の素描19　ミレー』講談社、1978年
『25人の画家 現代世界美術全集6　マネ』講談社、1981年

2006年11月23日、大島清次は肺炎のため、栃木県下野市の病院で82年の生涯を閉じました。その業績は、美術史研究における重要な礎となり、多くの研究者や美術愛好家によって今もなお語り継がれています。大島清次の功績は、美術史だけでなく、美術館運営、美術評論といった多岐にわたる分野において、後世に大きな影響を与えています。

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